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ハンドプリントの布雑貨

洋服や布小物を作るとき、みなさんはどんなことを考えながら布を選びますか?
色、素材、柄……。布選びの要素はいろいろありますよね。
もしも、布からデザインして、自由に作品を作ることができたなら、ハンドメイドの世界はぐーんと広がるかもしれない……。fabrica uka(ファブリカ・ウカ)の戸田亜由美さんは、そんな「夢物語」を実現した作家さんです。

たとえばこのバッグ。さまざまな柄を刷った白リネンを格子窓のようにコラージュしています。名付けて「Lattice window」。
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この小さな四角に描かれた柄は、すべて戸田さんがデザインしたパターンなのです。
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パターンにはそれぞれ名前がついています。上段真ん中は「tomaheta」。つまり、トマトのヘタ……。その下は「kamifubuki」(紙吹雪)。左上と右下は「bean」(豆)です。fabrica ukaのpatternsページに並んだモノクロのパターンをクリックすると、「布に色」という鮮やかな世界が飛び出し、それを見るのが楽しくて、ついつい全部クリックしてしまいます。

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「日々の暮らしの中にあたりまえのように空気のように存在しているいろいろな『もの』や『こと』をモチーフにパターン(模様)を作っています」という戸田さん。

傘におちる雨粒、野菜のオクラやトマト、絡まる糸、
小さなつぼみがついている春待ちの枝、遠くに見える高層ビル群、富士山……。

日常の風景を「デザイン」に落とし込み、再び布小物として日常に戻していく……。戸田さんが創り出すシンプルで気持ちのいいパターンが、日々の暮らしにすっと溶け込んでくれるのは、そんな成り立ちのなせる術なのかもしれません。

「大判の布に一気に一つの「パターン」を刷るのではなく、一つ一つの作品のどの生地にどの「パターン」をどの配置で刷るかをまず決めて、おおまかに必要なサイズで生地をカットしてから刷っています。シルクスクリーンは重版印刷が可能なので、複数の『パターン』を同じ生地内に混在させることもできるし、柄の一部の色を変えて多色刷りもできます。さらにプリントにステッチを加味していくことで、どうしても平面的になりがちな『パターン』に奥行きが生まれてくれるような気がしています」(戸田さん)

こちらはパターン「wave」を使ったがまぐち「Passage of water」。作品のデザインに合わせてパターンを部分使い。北欧の古い絵本に出てきそうな色合いのステッチを加えています。チェーンをつけてお出かけできるがまぐちに。
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深い色合いで、スパイスを効かせたがまぐち「Refreshing」。前と後ろでデザインでデザインに変化をつけて。
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ニットピンブローチは、さまざまなパターンで制作しています。
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「上から順に高層ビル群、マッチ棒、卵焼き、紙吹雪のパターンを使用しています。見慣れた景色、どこにでもある物、好きな食べ物、降ってきたら楽しいもの。インスピレーションの源はあちこちにあります」

こちらはファブリックパネルです。テーマは「candle town_Night」。
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「立ち並ぶビル群も遠目から薄目で眺めてみたらキャンドルに見えなくもありません。赤く点滅する航空障害灯は、さしずめキャンドルの灯火」
夜空には、キラキラと瞬くたくさんの星をステッチしています。

作品づくりのベースとなる生地はリネンが中心という戸田さん。「手に取ったその日から長く使われてきたような、どこか懐かしい色味のものを選ぶことが多いです」。使うほどに手になじみ、やさしい風合いになっていくリネンの生地は、戸田さんのパターンがデザインされ、なおいっそう特別なものになっていきます。

「お客様はそれぞれみなさん気に入ってくださっている「パターン」があるようです。それがいろんな作品の中のいろんな見え方やステッチとの組み合わせに楽しんでくださる様子を拝見するのが密かな楽しみです」

戸田さんの作品は、11/27(木)から12/2(火)まで開かれる「tenowaさんのクリスマス」というイベントにおめみえするそう。クリスマス前ということもあり、いつもの作品に加えてクリスマスを表現する展示も考えているとのことですので、楽しみですね!

戸田さんのサイトfabrica ukaはこちら;http://fabricauka.jp
tenowaのイベント情報はこちら:http://tenowa.info/