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Visit artist file 024 吉本悠美さん(テキスタイルデザイナー)

KESHIKIを通して素敵な風景を見た時の気持ちを共有したい

吉本悠美さんは、大学院在籍中の2013年にコッカプリントテキスタイル賞『inspiration』の審査員特別賞を受賞。2016年6月、コッカよりKESHIKI第一弾をリリースしました。「風景画を飾るように、生活を彩る布」をコンセプトにしたKESHIKIは、2025年に10周年を迎えます。10年にわたる創作活動のなかで、「変化したこと、変わらないこと」をテーマに吉本さんにお話を伺いました。

制作活動の拠点を東京から山梨へ
コッカファブリック(以下KF):吉本さんは、東京造形大学と西桂町・富士吉田市が連携して進めてきた『富士山テキスタイルプロジェクト』をきっかけに、2018年に山梨県西桂町にご家族とともに移住されました。移住してみてよかった点はどんなところですか?

水や野菜が美味しい!というところに感動しました。すぐ近くに山や湖があるところも良いなと思っていますし、子どもにとっても良い環境かなと思います。また、織物の産地としても知られる地域ですので近くに工場が多数あったりして生産現場が近いのもありがたいです。

KF:驚いた点はありますか?

家の周りにシカやサルがいたことですね。一瞬時が止まったかのようにシカと見つめ合い、ジブリのような体験をしたことがありました。

KF:自然に囲まれた環境は、創作活動にどのような影響を及ぼしていますか?

自然からのインスピレーションは増えたと思います。こちらに移住してから3回くらい登山に挑戦しましたが、その時に見た自然では山道の中でしか見られない自然で印象的でした。

KF:毎日の生活サイクルを教えてください。

午前中から夕方まで仕事をしています。創作活動をはじめ、自分のブランドの商品開発、納品準備、メール返信など様々です。東京には打ち合わせやイベントなどで月に1回行くか行かないかぐらいでしょうか。

環境の変化で視野が広がった
KF:2016年6月にKESHIKIの第1弾をリリースして以来、コレクションごとに3、4柄を発表しています。この10年間のテキスタイルを振り返って、お感じになることをお聞かせください。

あっというまに10年間が経っていて、こんなにたくさんの柄をリリースさせてもらえていたんだなと思い、感謝の気持ちでいっぱいです。たくさんの表現ができて嬉しい限りです。今見るとあの時のあの柄、もうちょっとこうすれば良かったなぁとか思うところもあります(笑)。

KF:山梨に移住するなど、吉本さんを取り巻く環境の変化に伴って、KESHIKIが変化した点はありますか?

インスピレーションが増えたと思います。東京に住んでいた時も仕事で山梨にはたまに訪れていました。その時は東京には無い風景に刺激をもらっていました。今はその逆転現象みたいなものもあって、たまに東京に行くと、知っているはずの風景の中にもこれ面白いな〜と思うものを発見できるようになった気がしています。一方山梨では、住んでいるからこそ見えてくる身近な風景があり、季節の移り変わりで変化する風景も見ることができます。環境の変化があったからこそ視野が広がったような気がしています。

KF: 一方、10年間で変わってないことは、どんな点でしょうか?

柄に対するスタンスというか、KESHIKIを通して素敵な風景を見た時の気持ちを共有したいというか、その思いは変わっていません。そして、新しく出す柄が、常に自分にとって新鮮なものをアウトプットできるようしたいという考えもそのままです。

KF:吉本さんは、ライフスタイルブランドとのコラボレーションも多く手がけています。幅広い活動を行うなかで、KESHIKIはどんな存在なのでしょう?

KESHIKIは生地での販売が前提で、生地がゴールの仕事はあまり無いので、デザインする時をとても楽しみにしている存在でもあります。貯めてきたインスピレーションをどうやってアウトプットしようかなとか、どんな配色にしようかなとか、仕上がりがとても楽しみな存在でもあります。

KF:SNSなどではKESHIKIを使った洋服やバッグが紹介されています。生地の具体的な形をご覧になってどんなふうに思いますか?

自分がデザインするときは生地がどんな使われ方をするとかをあまり想像していないので、色々な使い方をしてくださり、とても嬉しいですし、こんな風に柄が見えてくるのかと勉強にもなります。

KF:KESHIKIは、海外にもファンが多いと聞いています。海外のファンの方へのメッセージをお願いします。

いつもKESHIKIを気に入って使ってくださりありがとうございます!私が見た日本で見たKESHIKIが海外の方にも届くなんて想像もしていなかったですし、とても嬉しいです。これからも素敵と思ってもらえる柄が描けるようにがんばります。

2025年のコレクション
KF:2025年は、復刻柄1柄+新柄3柄の合計4柄がリリースされます。各柄への想い、こだわりポイントをお聞かせください。
「Asanoyama」

復刻柄です。山梨に移住してから朝ランしていた時に見た山がインスピレーションです。大きな色面が大胆に入った構図でインパクトがあります。裁断の仕方で柄の見え方が変わるのでぜひ何かものを作って楽しんで欲しいです。4配色で定番の色から新色はPOPな印象ものからシックな落ち着いた印象ものまであります。

「Lake and City」

家の近くにある5つの湖からインスピレーションを得て描いた柄です。湖と湖の周りにある町と山の3つを違う表情で描いたら面白いのではと思い描いた柄です。裁断されると3つの表情が良いアクセントとなるのではと思っています。

「Harappa」

今回リリースする柄の中で一番可愛らしい雰囲気の柄となりました。家の目の前の原っぱをインスピレーションに描いた柄です。植物の種類をたくさん描かずにあえて絞り、線ごとに色や方向を変えて動きを出しています。配色もとても上手くいったなと思っていて、選びきれないくらいどれも良い色です。個人的には娘の洋服作りにこれでチャレンジしたいな〜と考えています。

「Station City」

テクスチャ感が全面に表現された柄になっています。東京郊外で見た大きな商業施設と駅が合体したような風景からインスピレーションを得た柄です。建物を表現するとなるといつもは色面とテクスチャ面を組み合わせて表現していましたが、今回はテクスチャ100%で描いたらカッコ良いのではと思い、できた柄です。沢山の色が混じり合って描かれているのでそこも楽しんでもらえたら嬉しいです。

オリジナル製品×KESHIKIの空間展示をやってみたい
KF:吉本さんは、人や空間をユニークに装飾するテキスタイルブランド、PORTRAIT LABを立ち上げています。PORTRAIT LABは、いつ、どんな思いで始めたのですか?

PORTRAIT LABはコロナ禍の時に立ち上げたブランドです。布で何か自分の周りを装飾して気分を盛り上げられるようなものができたらという思いで始めました。

家にいることが増えてソファが欲しいな〜なんて思い、ソファの画像検索をひたすらしている時期がありました。ソファの画像を沢山見ているとソファの上に置いてあるクッションは四角ばかりだと気づき、これを色々な形にしたら面白いのではと思い作ったのがFabric object というクッションのシリーズです。

KF:今後やってみたいことをぜひお聞かせください。

Fabric object の種類を増やし、Fabric objectとプリントテキスタイルで埋めた展示空間やインスタレーションをやって見たいです。

KF:最後に、コッカファブリックをご覧になっているみなさまへのメッセージをお願いします!

ここまで読んでくださりありがとうございます。またいつもKESHIKIを気に入ってくださりありがとうございます。KESHIKIは布販売なので、どんな風に使っていただいても構いません。以前、ただ壁に飾ると言って購入くださったお客様がいらっしゃり、とても嬉しかったです。ただ飾るでも、バッグでも、洋服でも好きなように気軽に使っていただけたら嬉しいです。今後も良いデザインができるようにがんばります。

KF:ありがとうございました!

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