Visit artist file 023 高木美咲子さん(陶芸作家)

子どもの頃に見た夢のように フワフワした誰かの物語

「mizacosha(ミシャコシャ)」という活動名で、動物や植物をモチーフに作品を手がける陶芸作家の高木美咲子さん。2025年、コッカと一緒に作ったテキスタイルコレクションがデビューします。温もりあふれる作品の背景と初めての布づくりについてお話を伺いました。

誰かに喜んでもらうことが作品づくりの原動力
コッカファブリック(以下KF):高木さんは京都芸術短期大学で陶芸を学ばれたそうですが、陶芸のどんなところに惹かれたのですか?

小学生のときに陶芸体験をしたことがあって、そのときのことが今でも心に残っています。焼き上がるまでに時間はかかったんですが、その間のワクワク感がすごく楽しくて忘れられませんでした。もともと絵を描いたり、ものを作ったりするのが好きだったので、自然と陶芸に惹かれていった感じです。

KF:陶芸教室で働きながら制作を続け、2004年には交野市(大阪府)に工房を構えていらっしゃいます。ご自身の工房を構えた当初は、どんな作品を作っていらしたのですか?

工房を構えた初期の頃は、海外のアール・ブリュット作品や、障害のある子どもたちによる陶芸作品に影響を受けていました。また、音楽も好きだったことから、楽しさやエネルギーにあふれた作品を目指して制作していました。振り返ってみると縄文時代の作品のような雰囲気にも見えるものになっていたように思います。

KF:作陶するうえでのテーマやモットーをお聞かせください。

使う人が楽しい気持ちになったり、お料理や後片付けの時間がちょっと嬉しくなったりするような、そんな気持ちを届けられる作品を作りたいと思っています。絵柄から物語を想像できるような楽しさも大切にしています。

KF:20年の長きに渡り陶芸を続けていらっしゃいますが、その原動力は何でしょうか?

ものづくりが大好きで、焼き上がりを待つワクワク感もたまらないんです。自分にとっていちばんできることは、作って誰かに喜んでもらうことだと思っていて、その喜びがあるからこそ、続けてこられたんだと思います。

KF:工房を構えた当初から今にいたるまで、変化したもの、変わらないものは何でしょうか?

初めの頃に比べて、作風はかなり変わりました。昔は抽象的な模様が多かったんですが、今は動物や人物など、はっきりしたモチーフが増えてきています。自分の生活の中で“キュン”としたことを作品に取り入れるようにもなりました。ただ、土や釉薬などの素材は、ずっと変わらず使い続けています。

KF:制作を続けるなかで、転機になったできごとや出会いがありましたら教えてください。

いちばん大きな転機は、やっぱり友人との出会いですね。最初は働きながら作品を作っていたんですが、その友人が「京都の手作り市に一緒にだそう。」と声をかけてくれて。そこから毎月出店するようになり、ものづくりの仲間もたくさんできて、少しずつギャラリーから声をかけてもらえるようにもなりました。今でもこのときの仲間は、大切な宝物です。

KF:たくさんのイベントに出展されていますが、イベント出展の楽しみ、醍醐味はなんでしょう?

お客さんと直接話して、反応が見られるのがすごく楽しいんです。リアルな声が聞けるのがイベントのいいところですね。次回の制作にまつわるヒントをもらえることもあって、とても貴重な時間だと感じています。

KF:陶芸のほかに、布作品も作っていらっしゃいますが、どんな経緯で作られるようになったのですか?

手作り市の友人とコラボで何か制作しようとなり、そのときに布に描ける絵の具に出会ったのがきっかけです。陶芸以外の素材で表現するのも楽しくて、そこから布作品も作るようになりました。

初めての生地づくりでは楽しく持てるか、着られるかを意識
KF: 2025年9月に「mizacosha」のファブリックコレクションが発売になります(受注期間:5月20日〜6月30日)。「テキスタイルをつくる」というお仕事を初めて聞いたとき、どんなふうに思いましたか?

テキスタイルを作るという話を聞いたときは、自分のデザインが布になるということに驚きましたし、すごくワクワクしました。作品が暮らしのなかで使ってもらえる形になるのは、とても魅力的だなと感じました。

KF:陶芸でも、テキスタイルでも、「ミシャコシャ」の世界観は共通していると思うのですが、テキスタイルづくりにおいて特に意識したのはどんな点ですか?

でき上がったものが楽しく持てるか、楽しく着られるか、暮らしのなかに自然と馴染むかといったことを意識しました。陶芸ではあまり考えなかった視点も多く、新鮮な気持ちで取り組むことができました。

KF:「陶芸ではあまり考えなかった視点」とは、具体的にどんなことだったのでしょうか?

陶芸では作品として完成した時点で一区切りでしたが、テキスタイルでは、布が誰かの手で何かに仕立てられることを前提に、その先の使われ方まで思い描きながら作りました。

KF:テキスタイルづくりで面白かったのは、どんなことですか?

自分では思いつかないような視点からのデザインに出会えたことです。コッカの山根さんのご提案に「こんな表現があるんだ」と感動しました。なかでも印象的だったのは、布用に作った陶板をそのまま生かし、全体を見せるというデザイン方法でした。部分ではなく全体を魅力として引き出す発想に、新鮮さと驚きを感じました。人と関わることで、自分の枠を超えたものづくりができることに喜びを感じました。

KF:テキスタイルづくりで苦労したのは、どんなことですか?

陶芸の質感や色味が布になったときにどう見えるのか想像するのが難しく、正直、でき上がるまでどうなるかわかりませんでした。また、柄の大きさなど、布になったときの全体のイメージも掴めなくてドキドキしていました。

KF:でき上がった生地を初めてご覧になったときの印象をお聞かせください。

想像していた以上に可愛らしくて、すごく素敵だなと感じました。生地のクオリティが高く、さすがだなと思いました。この生地で何かを作るところを思い浮かべると、気持ちがワクワクしてきました。

KF:ファブリックコレクションは、【blue blue】【noir et blanc】【うたかた日和】【おはなしの国】の4柄がデビューします。各柄への想い、こだわりポイントをお聞かせください。

【blue blue】

陶芸で長く続けてきたシリーズがファブリックになり、とても嬉しいです。blueのグラデーションが生地でどう表現されるか気になっていましたが、素敵に再現された仕上がりに喜んでいます。

【noir et blanc】

シンプルなモノトーンのシリーズですが、微妙な色の変化や細かな削りの質感もしっかり生地に表現されていて、とても嬉しく思っています。

【うたかた日和】

陶芸では落ち着いた色味でしたが、生地になると明るくはっきりして、かわいらしい印象になったと思います。特にピンクのうさぎが愛らしく、見る人が幸せな気持ちになれたら嬉しいです。

【おはなしの国】

大胆なデザインでとてもおしゃれに仕上がりました。使い方次第でいろいろ楽しめると思うので、ぜひ手に取ってみてほしいです。私もパンツにしたいと思っています。

生地を使った傘や雑貨にもチャレンジしてみたい
KF:今後やってみたいことをお聞かせください。

陶器のシリーズもとても楽しかったので、また挑戦してみたいです。生地を使った傘や雑貨、イラストを活かしたファブリック展開にもチャレンジできたらいいなと思っています。

KF:最後に、コッカファブリックをご覧になっているみなさまへのメッセージをお願いします!

陶芸作家のミシャコシャです。陶器と布ってちょっと意外な組み合わせかもしれませんが、今回こうして布という新しい形にできたこと、ご縁をいただいてとても嬉しく思っています。陶器の雰囲気やぬくもりが、布でも楽しんでもらえたら嬉しいです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

KF:ありがとうございました! 6月20日には、ミシャコシャさんによる陶器販売会とコッカとのコラボ生地のお披露目・受注会「mizacosha 陶器と布のしらべ展」を開催します!ミシャコシャさんのあたたかな世界観がそのまま形になった新作テキスタイルを、ぜひ間近でご覧ください。

日時:2025年6月20日(金)10:00〜17:00
場所:KOKKA大阪本社3F (大阪市中央区備後町2-4-6)

ミシャコシャさんの温もりある作品に触れ、特別な一日をお楽しみください。