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「スタッフコラム」では、コッカファブリックの運営スタッフがキャッチした気になるモノ・コト・スタイルをお届けしています。第6回目は、手芸&ドール服デザイナー、武井聡美さんのアトリエ訪問です。制作の様子やコレクションを見せていただきながら、ミニチュア・ソーイングの楽しさと魅力を伺いました。
武井さんのハンドメイド・ヒストリー
コッカファブリックと武井聡美さんとは、かれこれ10年来のおつきあい。本サイトのcraft&sewingのコーナーで初めて作品をお願いしたのは2016年のこと。以来、作っていただいた作品は50作以上。お世話になりっぱなしの作家さんなのです。そんな武井さんのアトリエに初めておじゃましました。

幼い頃から手作りが大好きだったという武井さん。小学校時代にはお母様と一緒にリカちゃんの洋服を作ったり、フェルトで人形の服や食べ物を作ったり。紙やダンボールでドールハウスづくりにも挑戦していたそう。
「本格的に6分の1サイズのドール服や小物を作るようになったのは、息子が幼稚園に入った頃。最初はミニチュアバッグからスタートしました。2011年頃からイベントに出展して、少しずつドール用の小物や服を販売するようになったんです」と武井さん。
2016年の日本ホビーショーのハンドメイドイベント、第1回「Handmade MAKERS’(ハンドメイド・メイカーズ)」に出展した際、初めてドールをブースに置いて販売。
「それまではドールなしの小物や服だけの販売だったので、ドキドキしながらドールを並べました。でも、当時はハンドメイドイベントでのドール服や小物の認知度が低くてへこみました。いつか自分の本を出版してドール服や小物の魅力を知ってもらいたい!って思いました。どうやったらきれいに縫えるだろうかと、針を替えたり、糸を替えたり・・・。思い描く理想に近づけるためにあらゆる道具を試しました」
作ったドール服や小物をインスタグラムで配信しながら、友人のハンドメイド作家と定期的に作品展を開き、ドール服やミニチュア小物を教えるレッスンも開始。さまざまな経験を重ねながら一歩ずつ自分らしいドール服を模索していきます。

こうしてたどり着いたのが、「リアルな洋服と同じように、自分の好きな服を作る」というコンセプト。武井さんならではのやさしい世界観が共感を呼び、やがて出版社の編集者の目に留まり、2025年に念願の著者本『22cmサイズ 大人ドール服』を出版したのです。
小さな世界でリアルを追求するのが楽しい!
日々、新しいデザインを次々と生み出している武井さんですが、ドール服づくりの魅力はどんなところなのでしょう?
「ミニチュアという世界のなかでよりリアルさを追求し、その方法や作業から完成までのプロセスを楽しめるところだと思います」
小さな世界でリアルさを実現するには、素材選びにも工夫が要ります。その際たるものが生地。コッカファブリックで依頼するバッグやポーチは、オックスやシーチング、綿麻キャンバスなどが多いのですが、ミニチュアとなるとちょっと勝手が違うような・・・。
「ドール服を作り始めた当初は、薄い生地やドール向きの素材がなかなか見つからなくて苦労しました。ネットで購入した失敗素材もたくさんあります」
トライ&エラーを繰り返しながら、少しずつ自分の感覚にフィットする生地がわかってきたそう。
「ドール服にはローンを愛用しています。ローンで縫うと、シュッとしたフォルムに仕上がります。シーチングやブロードで作るとふわっとした感じになってしまうんです。色は白が好きなので、白い生地にピンタックを入れて立体感を出したりしています。柄のある生地はできるだけ柄の小さいもの、薄いものを選んでいます。アウターは生地の薄さよりも見た目重視でしょうか」
制作用に集めた布はアトリエのオープン棚に収納。アイデアを考えるときに目に入らないよう、普段はカーテンで隠して収納しています。


ドール服を作っていて一番楽しいのは、思い通りにでき上がった瞬間だとか。
「アイデアを描いて型紙を起こし、いざ作ってみると、あれ?ということが多くて・・・。その後、あれこれ修正してうまくできたときの達成感がたまらないですね」
着せ替えコーデ愛用のミニチュアコレクション
ドール服づくりとともに武井さんが関心を寄せているのが、ミニチュアです。アトリエの一角を占めるドクターズキャビネットには、少しずつ集めたコレクションが飾られています。

「着せ替えコーディネートが好きなので、それに合う靴や小物類を集めるのが好きなんです」
クリアケース何箱にもなる靴のコレクションには、スニーカーからハイヒール、下駄まで、よくぞここまで!というくらい、バラエティに富んだ品揃え。武井さんのミニチュア愛が伝わってきます。

友人の作家さんの作品だという家具は、主に1/6サイズのもので、どれも本物とみまごうほどの精巧さです。

「とくにナポシェフ(ナポレオンシェルフ)には目がなくて・・」
ナポレオンシェルフとは、19世紀のフランス、ナポレオン3世の時代に作られた飾り棚。華奢な柱が特徴で、優美なフォルムがドール服とのコーディネートに似合いそうです。
キャビネット上段には、見覚えのある猫ちゃんを発見! 彫刻家の花房さくらさんの作品です。花房さんといえば、コッカでコラボレーションテキスタイルを出させていただいたアーティスト。2023年に出した「ネコノテキスタイル」の「夜まで待てない」シリーズでは、武井さんに可愛らしい筒型ポーチを作っていただいたのでした。

こんなところでご縁がつながっていることが嬉しくなりました。
午前中は作品撮影、午後は制作タイム
ドール服の制作、作品撮影、インスタグラムでの発信、レッスンの準備など、武井さんの毎日にはやることがいっぱい。一日のスケジュールはどんな感じなのでしょう?
「作品の撮影は午前中に行うことが多いですね。作業台の上や自然光が入る窓際に椅子を並べて撮影することもあります」

武井さんのアトリエには、背景ボードや布など、撮影に必要ないろんなものが揃っています。そのときどきのドール服に合わせて、ミニチュアを選んでスタイリング。なんだか楽しそう。
「あっというまに1時間たっちゃいます」

午後はミシンに向かって制作タイム。パーツのカット、縫い代の折り目つけなど、ミシン台の上でなんでもやってしまうのが、武井さん流。


武井さん御用達の道具は、手芸メーカー・クロバーの「金属へら&鉄筆」と「コロコロオープナー」、そして仮止め用ののり。型紙の制作や縫い代の折り目つけなどに重宝しているそう。

取材中に驚いたのは、目打ちをシャッシャッとピンクッションでしごき始めたこと。え? 武井さん、いったい何をしているのですか?
「目打ちを磁気化しています。こうすると、目打ちを当てただけでまち針がくっついて取れるんです」

種明かししてもらうと、お手製のピンクッションに磁石を仕込んであるそうで、ピンクッションで擦ることで目打ちが磁気を帯び、まち針がくっつくという仕組み。
「ミシンで縫いながらまち針を外すときに、まち針を手で抜いていく人も多いのですが、その動作でわずかに布がズレてしまうことがあります。こんなふうに布に刺したまち針に目打ちを当てるだけで、サッとまち針が抜けると、ズレる心配がありません」
わずかなズレも作品の完成度に影響するドール服ならではの細やかな気遣い。1ミリ、0.5ミリの小さな世界のソーイングを続けるなかで、武井さんが編み出した方法です。
ドール服やミニチュア小物のレッスンの準備時間もきちんと確保しています。
「型紙や布の準備を入念に行いたいので、レッスンは月に3回までと決めています。生徒さん一人一人に目が行き届くよう、定員も基本的に6名、多くて8名にさせてもらっています」
取材中に見せていただいたのは、浴衣の帯づくりのレッスンキット。寸法どおり布をカットし、1つ1つパッケージに入れる。カット済みの布が美しく並ぶキットに生徒さんたちの喜ぶ顔が浮かびます。

「レッスンでは作り方や道具についてよく聞かれます。正解はないのでいろいろ試してみることをおすすめしています。私のやり方はあくまで一つの方法なので」
レトロファッションを再現してみたい
いつかは自分の本を出版したい!と願っていた武井さんですが、いざ出版社から話があったときは、嬉しさよりも不安のほうが大きかったと言います。
「最終的に41作品を掲載したのですが、短期間にたくさんの作品が作れるだろうかと不安でした。掲載したいドール服はすべて、最初に白い布でトワル(試作見本)を作り、編集部に検討してもらうなど、慎重に作業を進めました」

そのトワルは、撮影中に「可愛い!」と評判になり、本の総扉に登場しました。

作っているうちに次々とアイデアが浮かび、「そんなに数が作れるだろうか」の不安は、いつしか「思った以上に載せられない」という葛藤に変わっていったそう。
「本の制作は、編集者やデザイナー、カメラマンなど、チームで作り上げていく作業。撮影の方法やページ構成など、知らないことだらけでとても勉強になりました」
本にはコッカの布もたくさん使っていただきました。左のミモザ柄のワンピースは、ドール用に柄を小さくデザインしたテキスタイルです。

著者本の出版という夢を叶えましたが、これからやってみたいことは何でしょう?
「和洋ともに少し懐かしいレトロなファッションが好きなので、昔の再現コーデアイテムを作ってみたいです。オードリー・ヘプバーンや『若草物語』とか。あと海外でのワークショップもやってみたいです!」

愛読書を眺める武井さんは本当に楽しそう。好きなことをひたむきに追いかける姿に思わずエールを送りたくなりました。次に取材におじゃまするときは、きっとレトロファッションの何かが始動していることでしょうね。(取材・文/須藤敦子 撮影/奥 陽子)
武井聡美さんプロフィール

手芸&ドール服デザイナー。Tournesol*(トゥルヌソル)として活動。幼少期より布小物や編み物、DIYなどさまざまな分野のモノ作りを経験。2011年より布雑貨や 1/6サイズのミニチュア小物の販売をスタート。現在はヴォーグ学園、ボビナージュ(Bobinage)などでドール服の講師を務めるほか、web shopやイベントなどでも作品を販売。日々、大人かわいい洋服やバッグを生み出している。SNSでレッスンやイベント等の詳細情報を発信。2025年9月に初の著書本『22cmサイズ 大人ドール服』(主婦と生活社)を出版。
Instagram @satomin.1223



