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「スタッフコラム」では、コッカファブリックの運営スタッフがキャッチした気になるモノ・コト・スタイルをお届けしています。第10回目は、英語サイトを担当するアメリカ・ロサンジェルス在住のスタッフが取材したクラフト&アートの美術館、「クラフト・コンテンポラリー」のお話です。
LAの美術館めぐりならミラクルマイルへ
芸術の秋ということで、今回ご紹介するのは美術館。ロサンゼルスと言うと、青い空やビーチ、華やかなハリウッドのイメージがあるかもしれませんが、実は、世界が誇る「アートの街」でもあることをご存知でしょうか。多様性と開放感あふれるこの街にふさわしく、美術館も個性にあふれ、気軽に立ち寄るような感覚でアートや工芸品に触れることができます。
ロサンゼルス(LA)で美術館巡りを楽しむのなら、絶対に外せない場所が「ミラクルマイル(奇跡の1マイル)」と呼ばれるエリア。ここは、自動車社会の到来を見据えて1920年代に開発され、歴史的な商業地区として発展しました。現在のミラクルマイルは、LAの文化の核となる5つの主要な博物館がずらりと並ぶ「ミュージアム・ロウ(Museum Row)」として知られています。

西海岸最大級を誇る「ロサンゼルス郡立美術館(LACMA)」をはじめ、自動車の歴史を網羅した「ピーターセン自動車博物館」、映画の祭典アカデミー賞の歴史を伝える「アカデミー映画博物館」、そして太古の化石が発掘される「ラ・ブレア・タールピッツ(ペイジ博物館)」、厳選されたハンドクラフトや陶芸、現代アートを展示する「Craft Contemporary(クラフト・コンテンポラリー)」などが、信じられないほど狭いエリアに密集しています。それぞれが全く異なる個性を放っており、アート好きなら一日中いても飽きない、まさに「奇跡の1マイル」なのです。
LA郡立美術館 日本美術パビリオン
ピーターセン自動車博物館
アカデミー映画博物館
ラ・ブレア・タールピッツ(ペイジ博物館)
ユニークな歴史をもつ「クラフト・コンテンポラリー」
今回訪れたのは、クラフトと名前に入っているのでずっと気になっていた「Craft Contemporary(クラフト・コンテンポラリー)」。錚々たる大型ミュージアムが軒を連ねるミラクルマイルで、ひときわ温かみのある佇まいの3階建てのネオ・ジョージアン様式の建物が異彩を放っています。
この美術館が焦点を当てるのは、陶芸やテキスタイル、木工、ガラスといった「クラフト(工芸)」をルーツに持つ現代アート。また同館は多様なクリエイターが集うコミュニティのプラットフォームとして、アートを肌で感じ、自ら生み出すためのクリエイティブな空間としての役目も担っています。

クラフト・コンテンポラリーの建物
訪問当日は、幸運にもシニアキュレーターのフリーダさんやディベロップメント&広報担当ディレクターのエミリーさんに直接お話を伺う貴重な機会に恵まれました。
「クラフト・コンテンポラリー」は、もともとは1965年に「The Egg and the Eye(卵と目)」という、なんともユニークな名前のレストラン兼ギャラリーとしてスタート。ここでは、50種類以上ものオムレツ(卵)を味わいながら、世界中から集められた洗練された工芸品やアートを鑑賞(目)することができたのだそう。食とアートを融合させたこの画期的なスポットは、瞬く間にLAのクリエイターたちのコミュニティの場となりました。「The Egg and the Eye」時代を知る人たちが、今ではお孫さんを連れて「クラフト・コンテンポラリー」を訪れてくれるのだそうです。
過去の展示を紹介したコーナー
その後、1973年に非営利の美術館として生まれ変わり、幾度かの名称変更を経て2018年に現在の「クラフト・コンテンポラリー」となりました。
館内には、創始者であり自身もアーティストのエディス・ロビンソン・ワイル(1918年~1999年)さんの、「手作りの品々と触れ合うことが日常生活を豊かにする」との思いが今も息づいています。現在ハリウッドで活躍する俳優のノア・ワイルさんは彼女の孫。幼少期にはミュージアムで多くの時間を過ごし、今でも時折ミュージアムを訪れるのだそうです。
クラフト×現代アートがテーマ
「クラフト・コンテンポラリー」がテーマに掲げているのは、その名の通り「クラフト(工芸・手仕事)」と「コンテンポラリー(現代アート)」の融合です。
シニアキュレーターのフリーダさんが、現在進行中の展示や今後のプランについて情熱たっぷりに語ってくださいました。
「アートとクラフトの境界を軽やかに横断するこの美術館では、2025年から2031年にかけて長期プロジェクト『The Untold Story of Craft(クラフトに秘められた物語)』を展開中です。テーマは、Air、Water、Earth、Fireという4つの自然の要素。粘土や木、ガラス、金属、そして繊維といった身近な素材を入り口に、まだ十分に語られていないクラフトの物語を掘り下げていきます。
ここでの展示の根底には『Fun to Play, Keep Brain Creative(遊んで、考えて、創造する)』という考え方があり、素材に触れ、遊び、想像することの楽しさが大切にされています。テキスタイル好きに注目してほしいのが、『Water』の要素として位置づけられた繊維の展示です。今後グアテマラのテキスタイルをテーマにした企画を予定していて、土地に根ざした染織文化との出会いが期待できますよ」
展覧会を構成する4つの要素
現在開催中の展示テーマは「Earth」
現在開催中の「Tierra(スペイン語で地球や大地、故郷の意味)」は、Earthをテーマにした展覧会。14人のアーティストに加え、6人のコントリビューターが参加し、アート作品だけでなく、詩や手紙、音などを通じて作品と対話する空間を生み出しています。素材としての土そのものを超えて、その先にある豊かな関係性をそっと体感させる、人と土の間に生まれる「深い結びつき」にスポットを当てた展示でした。伝統的な技法をリスペクトしつつも、それを現代的な視点で解釈し直したアート作品だけでなく、その周囲に広がる物語までも鑑賞するような体験が印象的でした。
現在開催中のtierra展示
まるで織物のような作品
展示は6か月ごとに展開され、次はMetal(金属)、Air(空気・大気)と続く予定。以前開催したAirでは調香師をゲストキュレーターに迎え、「香り」を軸に神話とアートを結びつけるユニークな試みを実施。日本人アーティストも参加したとのこと。次回のAirは、作曲家との協働による音の展示が計画中で、鑑賞者の感情に応じて変化する音楽体験を目指しているそうです。
そして、この美術館が特に大切にしているのは、サステナビリティ。展示解説やサインには再利用可能な布を使用し、壁面には独自に開発した塗料を採用。偶然にも7月のTopicsで紹介したCreative Reuseを推進する「REMAINDERS Creative Reuse」の活動にも共感を寄せており、将来的なコラボレーションも実現したいとお話してくださいました。

布に印刷された展覧会の解説文
コミュニティとつながる温かな時間
この美術館のもう一つの魅力は、見るだけでなくアートを体験し「自分も参加者や作り手になれる」という点です。「誰もがクリエイティブになれる場所」というエディスさんのスピリットは、今も変わらず息づいています。ゲストアーティストによる体験型ワークショップ、参加型イベント、アートトーク、講座、上映会などその内容も様々。ワークショップで粘土に触れたり、ZINE作りを学んだりと、地元のクラフト好きが集まる温かなコミュニティの場となっています。晴天の多いロサンゼルスの気候を生かして、ワークショップは屋外でも。
屋外のワークショップスペース
ショップにはクラフト作家の一点ものも
併設されているミュージアムショップは、通常のミューアムとは一線を画し、地元ロサンゼルスや世界中のクラフト作家たちが手がけた、1点もののジュエリーやハンドメイドの陶器、刺しゅうのキットや独特なテキスタイルのバッグなど、どれもこだわり抜かれたものばかり。まるで宝探しをしているようにショッピングを楽しむことができます。
ディスプレイにもクラフトのミュージアムらしいセンスが光っていました。せっかくのミュージアム訪問に合わせてジャーナリングをしようと思い、ぴったりのコラージュブックとステッカーブックをゲット。これからホリデーシーズンに向かうアメリカ。そろそろ家族や友人へのクリスマスギフトを考え始める時期なのですが、毎年ユニークなものを選び出すのに一苦労するのです。このショップなら、他にはない一点ものの素敵なアイテムに出会えそうです。



公共交通機関×アートの粋な取り組み
今回の訪問では、広報ディレクターのエミリーさんから「メトロ・アート・カルチャー・パス」という素敵なギフトをいただきました。ロサンゼルスというと車社会のイメージがありますが、2028年のオリンピックに向けて地下鉄の延伸が進み、「ミュージアム・ロウ」にも新しい駅がオープン。このパスを使って沿線の美術館や文化施設を巡ってもらうことが狙いなのでそうです。アートで彩られた駅を起点に、美術館やカルチャースポットを気軽に楽しめるのが魅力。チャージ式のTAPカードを提示すると、提携美術館の入場料割引やミュージアムショップでの特典などが受けられ、アートと公共交通をつなぐ、ロサンゼルスらしい取り組みだなと思いました。かつて車社会の到来を見据えて発展したミラクルマイルに、今では地下鉄が走る風景。都市の歴史と未来が交差する瞬間に、時代の変遷を感じたひとときでした。
メトロアートカルチャーパス
地下鉄の駅構内にもこんな素敵なアートが
手仕事のぬくもりに触れるマーケットへ
ミュージアムを訪問した翌週、地元のアートフェスティバルの一環としてCraft Contemporaryが中心となって「Autumn Harvest Market(オータムハーベストマーケット」を開催するということでお邪魔してきました。ミュージアムショップ「The Egg and The Eye」のブースをはじめ、地元アーティストや職人たちによる個性豊かなブースが並び、手仕事の美しい陶器やこだわりのフード、心ときめくスイーツなど、思わず足を止めたくなる魅力的な品々が勢ぞろい。食とクラフトが織りなすクリエイティブな空間で、ものづくりの温もりに出会える、五感で楽しむ特別な秋のひと時を楽しみました。

エグゼクティブディレクターのロディさんとディベロップメント&広報担当のエミリーさん
今回の美術館めぐりのジャンクジャーナルを作ってみました!


Craft Contemporary(クラフト・コンテンポラリー)について
1973年設立。工芸(クラフト)が持つ「人々を魅了し、感性を刺激する力」を大切にし、伝統的な素材や技法を取り入れた現代アートに焦点を当てた美術館。大規模な美術館では紹介される機会の少ない、実力派アーティストや新進気鋭のデザイナーによるダイナミックな展覧会を精力的に開催しているのが特徴。
プロのアーティストが直接指導する体験型ワークショップなど、独創的な教育プログラムを通じて、展覧会の魅力をより深く体験できる機会も提供。ロサンゼルスの地域社会において、人々がアートや創造性を共有し、お互いのつながりを深められる温かい環境を育んでいる場所として知られています。
Craft Contemporary
5814 Wilshire Blvd.
Los Angeles, CA 90036
(323) 937-4230
https://www.craftcontemporary.org/



