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「スタッフコラム」では、コッカファブリックの運営スタッフがキャッチした気になるモノ・コト・スタイルをお届けしています。第7回目は、英語サイトを担当するアメリカ・ロサンジェルス在住のスタッフが取材したクリエイティブスペースのストーリーです。
小さなガレージから始まったリユース活動
取材に訪れたのは、ロサンゼルスの北東、落ち着いた街並みが印象的なパサデナ。元日には、花や植物で装飾された美しいフロート(山車)が街を彩る「ローズ・パレード」が開催され、世界中の人々を魅了しています。
今回のお目当ては、アート&クラフトのスリフトストア(リサイクルショップ)とクリエイティブスペースの両方からなる「REMAINDERS Creative Reuse(RCR)」。コミュニティに根ざした、誰もが参加できるアート活動の機会創出、クリエイティブなリユース(再利用)と持続可能性をモットーに、非営利の団体によって運営されています。

お話を伺ったのは、RCRの教育普及活動のディレクター、トバン・二コルスさん。

RCRは、創設者で現エグゼクティブ・ディレクターのロビン・コックスさんのお家の小さなガレージから始まりました。彼女の描いたビジョンは、「人から人へと広がっていくクリエイティブなリユースとコミュニティ」をつくること。やがてストア、スタジオ、クラスを擁する活動へと成長していきました。今では、豊富なクラフト用品が揃うストア、自由に使えるオープンスタジオ、手頃な費用で参加できるクラスや創作ワークショップ、持続可能性の考え方を広めるための交流イベントなどを実施する活動へと成長。2020年に移転してきた現在の拠点があるのは、築100年の建物。15〜20名ほどのスタッフと30〜40名ほどのボランティアが日々の活動を支えています。
活動で使われる材料や資材、ストアの販売品はほぼすべて、地域の人々や企業からの寄付で賄われています。
「使わなくなった材料や道具をここに持ってきてもらえれば、必要としている人の手に渡り、再び活躍することができる。それは持ち主、次に使う人、そして環境にとってもやさしい選択。 ここはそうした眠っている材料に新しい命を吹き込む場所です」
今、人気なのはスローな手仕事!
「もちろん アップサイクルという言葉も素敵ですが、私たちが一番しっくりくるのは、クリエイティブ・リユース(創造的な再利用)。なぜなら、ただの再利用ではなく、ものに新しい役割を与え、もう一度輝かせることだから。ここでは何もないように見えるものから、何かを生み出すことが重要なのです」
「ここで起きる“流行”の多くは、やはりSNSの影響 を強く受けている」とのこと。数年前には、ラッチフックがTikTokで突然バズり、あっという間に「ラッチフックのクラスはありませんか?」「材料はありますか?」という声が殺到。そして流行が去るのも早く、次のブームへと移っていく―そんなサイクルが繰り返されているのだそうです。
今、まさに人気なのは、スローな手仕事なのだそう。

「スローステッチ、ニードルワーク、刺繍など、昔ながらのゆっくりとした作業が若い世代に再発見されています。背景にあるのは、縫い物や料理を学ぶ家庭科の授業が今はほとんど存在せず、家庭で教わる機会も減ったことです」
若い世代は「知らないからこそ興味を持つ」状態になっているという興味深いお話が。ニードルワークやソーイングのクラスはいつも満席。初めて針を持つ人も多く、世代を超えて、ゆっくりとした手仕事の魅力が広がっているのを感じているそうです。
「ここに来る人たちの多くがまさにSNS世代。だからこそ、私たちもこの場所の魅力を広げる手段としてSNSを大切にしています。面白いのは、利用者がここで買った素材で作品を作り、その様子を動画にして投稿し、タグ付けしてくれること。それを私たちがシェアし、また誰かが見つけて来店する―そんな循環が自然に生まれています。これもコミュニティの一部なんですよね」
手頃な参加費で楽しめる多彩なクラス
RCRは大きく分けて、1階にはストアと寄付品受付エリア、パフォーマンススタジオ、2階にはクラス用のスペース、オープンスタジオ、ステージがあります。
2階に入ってすぐに目を引くのは壁一面の色とりどりの作品サンプル。これを見て、次はぜひこのクラスを受講したいという人も多いそう。クラスの内容は多岐にわたり、アート版画や印刷、ジュエリー作り、ソーイング、編み物、刺繍、植物画の描き方、サルサやKポップダンスなど。現在、クラスは夜間を中心に週6日にわたって開催され、親子で楽しめるファミリー向けのプログラムも豊富。「楽しみながら何かを作って持ち帰れる」内容にしているのだそう。

「参加者はティーンエイジャーから60代までさまざま。年齢も背景も違う人たちが、同じテーブルを囲み、同じ時間を楽しむ。その光景こそが、この場所の魅力であり、続いてきた理由です」
クラスやワークショップで使う素材、スタジオの装飾やカーテン、テーブルまで、その 95%は寄付品で賄われています。「できるだけ買わない」という方針のため、色も形もそろっていないものが多い中、その雑多さこそが独特の雰囲気をつくり出しているのだそう。
2階のオープンスタジオエリアは、クラスが実施されるほか、時間帯によっては予約制のオープンスタジオとして開放されています。ソーイングや参考図書コーナー、大きな作業テーブル、自由に使える道具やミシンが揃い、必要な設備を使いながら、自分のペースで思い切り制作を進められる夢のような空間です。



1階のパフォーマンススタジオでは、K-POPダンス、カポエイラ、ヨガ、大人向け・子ども向けのダンスクラスなどが行われ、多彩な動きと表現が生まれています。さらに、創作や音声収録に使える レコーディングスタジオもあるのだそう。

クラス案内を見て驚いたのはその参加費の手頃さ!
「ここにあるものはすべて寄付でいただいた“無料のもの”。だからこそ、必要以上に高い料金を設定する理由はないのです。もちろん、講師やスタッフにはきちんとした生活賃金を支払い、そのうえで、残りはできる限りコミュニティに還元する。それがこの場所の理念です。クラスに来た人が、ついでにストアで買い物をして、誰かと話し、また別の日に一緒にクラスを受けるようになる。そんな小さなつながりが積み重なって、サステナビリティ、手頃な価格、創造性を大切にする人たちのコミュニティが形づくられてきました。私たちはそのすべてに、心から感謝しています」
寄付品がよみがえる!宝の山のストア
RCRの心臓部ともいえるドネーション(寄付品受付・保管)エリア。ここで受け取られた寄付品は、検品して分類されたのち、一時保管され、最終的にはストアへと運ばれていきます。 その一連の流れを支えるのはこのエリアの専任スタッフたち。彼らの長年の経験と確立されたシステムのおかげで、寄付品は迷うことなく行き先が決まります。何百というカテゴリーの保管容器が整然と並ぶ様子には圧倒されました。

ドネーションエリア担当のブライアンさんとアディオさん。まさに現場の最前線で動いている“要”の存在。

「寄付すること」が日常の一部となっているアメリカ。水曜から土曜の10:00〜17:00の寄付受付時間は、常に人の動きがあり、活気にあふれています。
「学生や教師、アーティストといった、創作に必要なものを揃えるのが難しい人たちに向けて、手頃な価格でアートやクラフト用品を提供すること」をモットーに掲げたストアは、まるで宝箱のよう。店内は、エリアが色分けされ一目でわかるように工夫されています。例えば、赤はアート&クラフト、緑はオフィス用品。スタッフ手作りの巨大ポンポンが目印となって、迷うことなく目的の場所にたどり着けます。

奥のソーイングセクションはカッティングテーブルも完備。ここで使われる道具や素材も、ほとんどが寄付です。店内には「Just Bins」と呼ばれる宝探しのようなコーナーもあり、掘り出し物を探す時間そのものが楽しみになっています。

訪れた日も、個性的ファッションに身を包んだアーティストかな?と思われる人や学生らしきグループなど、レジでは列ができるほどたくさんの人が来店していました。
量り売りすることで、端切れや残った毛糸も無駄にしません。

この場所の魅力は、常にクリエイティブな人たちが周りにいること。バナーを作ったり、空間を飾ったり、誰かのアイデアが自然と形になっていきます。
店内でもちょっとユニークな「ブティック」。本来は扱わないはずのアイテムも「捨てずに活かす」というミッションのもと、新たなコーナーに。ジュエリーも多く、14Kゴールドやスターリングシルバーが寄付されることも珍しくないとのこと。

絡まったチェーンを家に持ち帰り、数時間かけてほどく“ジュエリーのアンタングラー”でもあるボランティアスタッフのマリオンさん。

「家族が亡くなり、持ち物の扱いに困って寄付されるケースもあります。一般のスリフトショップでは受け取られない品も多く、行き場を失ったものがここへたどり着くこともしばしば。この場所を見つけてもらえるのは、ある意味で幸運なのかもしれません。まとめて寄付された物の中に、お宝が隠されているなんてこともあります」
長年ここで働くトバンさん自身、学んだこともあるそう。
「すでに十分すぎるほどの物を持っているので、欲しいなと思うものがあっても、家に持ち帰るものは、本当に“今使うもの”だけにするということ。“いつか使うかも”の物が積み上がる前に、必要な線引きをする。 なぜなら、この店にあるものはどれも宝物のように見えてしまうからです」
必要とされる喜びと感謝の気持ち
昨年初め、隣接するアルタデナ市に甚大な被害をもたらした火災が発生した際、RCRが果たした役割は大きかったとトバンさんは言います。
「ここが『存在してくれてありがとう』と言われることはよくありますが、その言葉の重みを強く感じました。人には『行ける場所』が必要、だからストア再開の許可が出ると同時に、すぐに救援活動と店内の清掃を始めました。 心を落ち着かせたり、気を紛らわせたりする場所、何かに集中できる場所、そんな場所が災害のあとには特に求められます。再開後、多くの人が『ただここに来られるだけで救われる』と言ってくれました。私たちは、感謝される以上に、ここに来てくれる人たちに感謝しています。この場所が必要とされていること、その輪が続いていることを、決して当たり前だとは思っていません。 むしろとても幸運で、とても恵まれていると感じています」

近年、手仕事への人気が高まる一方、ロサンゼルスでも街の生地・手芸用品店がどんどん姿を消しています。布地やクラフト用品店の全米チェーンが昨年閉業した時には、「ここを訪れる多くの人が本気で落ち込んでいました。あそこは“自分の幸せな場所”だった」とトバンさんは言います。
「そんな人たちがここを見つけて、こんな場所があったなんて知らなかった、ここが新しいハッピープレイスになったという声が増えていて、私たちにとっても大きな励みになっています」
宝探しの戦利品は?
宝探しをするような楽しみにあふれるストアを案内していただき、誘惑に勝てずついついお買い物を。トバンさんのおっしゃった「家に持ち帰るものは、本当に“今使うもの”だけにする」ということにしたがって購入したアイテムでさっそくクリエイティブリユースを実践。
戦利品は、巻きのリボンとステッカーブック。2つ合わせてお値段は$4.50の超破格!使いかけというところもご愛敬。ストアで扱うアイテムは、完璧なものからそうでないものまで、とにかくリユースできることがポイントです。

お出かけ用の小物入れを作ろうと思って買っていた錨柄の布にピッタリと思い購入したマリン柄の巻きのリボン。

ステッカーブックは、初回のスタッフコラムでご紹介したジャンクジャーナル用に。夏のビーチトリップのページ作りに大活躍してくれました。

帰り際、ちらっと眼に入ったトバンさんのコンピュータの画面にはコッカファブリックのウェブサイトが。
「コッカが取り組んでいること、本当に素晴らしいと思います。 チュートリアルもどれも丁寧でわかりやすくて、見ているだけでワクワクします」と、なんとも嬉しいお言葉。
「誰でも、家でも職場でもない “サードプレイス” が必要ですよね。 安心して立ち寄れて、気持ちがほぐれて、ちょっと元気になれる場所。今、多くの人がそうした場所を求めています。だからこそ、私たちはその役割を担えることを嬉しく思っています。ここが、誰かにとっての“帰ってこられる場所”であればいいなと」
トバンさんの言葉を聞いて、私にも新しいサードプレイスができたな、そう思えた瞬間でした。(取材・文 nobuko アメリカ・ロサンゼルス在住)
REMAINDERS Creative Reuseについて
「Remainders Creative Reuse」は、アートやクラフト用品のセカンドハンドストアを併設した非営利のクリエイティブスペース。ストアでは豊富なクラフト用品を取り揃え、手頃な価格で創造性を育む場を提供しています。クラフトクラスや創作ワークショップ、オープンスタジオ、交流イベントなども開催。地域社会にリソースを提供し、地域に根ざした、誰もが参加できる芸術活動の機会を創出することを使命に活動しています。
REMAINDERS Creative Reuse
787 E Washington Blvd, Suite 101
Pasadena, CA 91104
https://remainderspas.org/



