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おいしいものが、布になる。 坂本あこさんのテキスタイル

さて今回は、先週の布博レポートでも少しご紹介した、坂本あこさんの作品をクローズアップします。

坂本あこさんは、第4回コッカプリントテキスタイル賞で準グランプリを受賞。今春、東京造形大学テキスタイル専攻の大学院を修了し、デザイナーとして独立。大好きな食をテーマにした「gochisou」(ごちそう)を立ち上げました。

こちらはその「gochisou」シリーズ。「布博 in 東京 vol.6」での坂本さんのブースです。
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ドーンと垂らされ、誰もが一瞬立ち止まってしまうほどのインパクトを放っているのは、「Bacon epi(ベーコンエピ)」。その左下は「Baquette」(バゲット)。1本ずつ切り離して袋に仕立てたら、おしゃれなバゲット入れに早変わり。そんな楽しみ方もできる布です。

さまざまなパンが描かれた布は、どれも大柄。どの部分を切り取るかでバッグの印象も変わります。
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布博の会場には、お洋服も。パン屋さんのコスチュームにもぴったりですね。
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「食べること」は、ひとが生きていくうえで欠かせない。その大切なことに興味を持つきっかけになれば……というのが、「gochisou」の願い。
「テキスタイルという視点から食べるものを考え、おいしいものを食べたときのように、ひとを幸せにさせるテキスタイルを目指しています」と坂本さん。「ひとを幸せにするテキスタイル」……なんて、素敵なんでしょう!

坂本さんが東京造形大学・大学院の修了制作として手がけたのは「yasou market」。こちらも「食」がテーマです。5種類の野草の柄を配色展開し、計10種類のテキスタイルを提案。天井から吊るして展示されていたのは、そのうちの4つ。左から、Huki(蕗)、Huyuichigo(冬いちご)、Kogomi(こごみ)、Sansyou(山椒)です。
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布はそれぞれ2通りの配色で作られていて、こちらがもうひとつの配色パターンです。
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「yasou market」のテーマは、「旬の山野草を味わい、楽しむ」。
「旬の野草たちをモチーフにテキスタイルに落とし込み、食材の野草が入るようなバケツ型のバッグも合わせて提案しました。これを使うことで、野草や山菜を採りにいくきっかけになったり、旬の山野草を味わう楽しさ、美味しさ、大切さを知って、旬の恵みを食卓で楽しむことが増えるきっかけになるといいなと思っています」(坂本さん)

そのバケツ型バッグがこちらです。
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中央のバッグは「Nemagaritake」(根曲がり竹)。布の展示がなかった、もうひとつのテキスタイルです。「巨大な柄も切り取り方で表情が変わるのが面白いんです」(坂本さん)

こちらは「Huyuichigo」(冬いちご)のバッグ。赤系と青系、2つの配色で仕立てました。
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青のバッグは、生地端の白地をバッグの入れ口に配して、ボトムにいくほど濃い色めに。美しいグラデーションを生かしたデザインです。赤のバッグは、白地を出さない総柄使い。小ぶりなフォルムで、ミニマムな可愛らしさが漂います。

「yasou market」の生地は麻。シルクスクリーンプリントで着色防染です。
「麻と綿では色の出方が違うんです。鮮やかな色に仕上げたくて、麻にこだわりました」(坂本さん)

自然が生み出す美しい色とも調和する「yasou market」の布やバッグたち。
ほどなくやってくる芽吹きの季節に、バッグ片手に散策に出かけてみたくなりますね。

「食」をキーワードに、さまざまなコラボレーションもしていきたいと抱負を語ってくれた坂本さん。
「パンが好き」「食べることが好き」「自然が好き」……。坂本さんの「好き!」がぎゅっと詰まったテキスタイルは、バッグや洋服に仕立てるたびに、幸せをおすそわけしてくれそうです。

坂本あこさんの「gochisou」のHPはこちら。http://www.gochisou-textile.com