「コッカファブリックのオリジナル生地を作ろう!」第5回目 染工場見学

4名のクリエイターさんたちとスタートした「コッカファブリックのオリジナル生地を作ろう!」という新プロジェクト。

プロジェクトメンバーは、コッカファブリックの人気コーナー「craft & sewing」で、コッカの布で作品を作ってくれている4名。杉野未央子さん、猪俣友紀さん、田巻由衣さん、武井聡美さんです。

企画から進めてきた生地づくりもいよいよクライマックス。11月上旬、生地ができ上がる工程を見学するため、染工場に向かいました。

見学に参加したのは、猪俣さん、田巻さん、武井さんの3名。朝9時半に京都駅に集合し、コッカスタッフと一緒に染工場へ。ひんやりとした空気に、澄み渡る空。まさに秋晴れの1日に “大人の遠足”が始まります。

創業100年の染工場へ

向かった先は、京都市と奈良市のほぼ中間に位置する染工場。創業100年、大正時代から続く老舗です。約1万坪という広大な敷地にいくつもの工場が連なります。通りにずらりと並んでいる大きな板は、捺染に使う版だそう。

生地ができるまでの“座学”からスタート

「ようこそ」と迎えてくれたのは、染工場の営業部と生産部の担当者さん。建物内にあるオフィスを通り抜け、一行は会議室へ。丁寧にまとめられた事業案内を配られ、生地ができるまでのスモールレクチャーが始まります。

生地の元になるものを「生機(きばた)」と呼ぶのだそうですが、その生機を受け入れてからお客様の元に出荷されるまで、ざっと14工程! 生機を整える課、色や柄を決める課、生地を染める課、仕上げをする課、そして製品を検品する課と、全部で5つのチームが順番に作業。その工程を写真つきで図解した事業案内はとってもわかりやすくて、勉強になります!

それぞれの工程名は専門の言葉ばかり。1つ1つ確認してはふりがなをふっていきます。

生機はゴワゴワ。これが布になるの?

レクチャーで全体の流れをつかみ、いざ工場見学へ。最初に訪れたのは生機を受け入れる場所です。

うず高く積まれた“固まり”が生機です。

そっと触らせてもらいます。

田巻由衣さん(以下、敬称略):9号帆布のようなかたさですね。

コッカ:この生機はサテンに加工されるものです。

9号帆布のような硬さなのに、サテンに加工されるなんて、ビックリです。

「ハウルの動く城」のような工場内へ

次は、生機を加工する場所へ。生機を必要な数量に束ねる「開反(かいたん)・結反(けったん)」が最初の工程です。

その後、
• 生地表面の毛羽を焼く「毛焼(けやき)」
• 不純物を取り除く「糊抜(のりぬき)・精錬(せいれん)」
• 生機についた色素を脱色する「漂白」
• 生地の光沢や染料の発色をよくする「シルケット」
と、続きます。

この工程の作業はおもに夕方から夜にかけて行われるそうで、私たちが見学に行った昼間は機械が止まっていました。稼働中の室内はとても暑くて、音もすごいそう。

田巻:工場の広さ、機械の複雑さに圧倒される!

武井聡美さん(以下、敬称略):映画の世界みたい。「ハウルの動く城」のような・・・。

田巻:ガッシャーン、ガッシャーンって(笑)

整え中の生地はこんなふうにカートに乗って工場内を運ばれていきます。


生地の「耳」はこうして作られる

生機を整える最後の工程が「巾出し(はばだし)」。生地を染める型に合わせて生地の幅をそろえる作業です。

生地の両脇には、針で開けたような小さい穴がついていますが、この穴ができるのが、巾出しの工程。生地の下から針が刺されるため、表面に穴ができるのです。

猪俣友紀さん(以下、敬称略):私がいちばん見たかった「布耳」ができる工程!

田巻:布ミミの針穴はこのときにつくのですね。

日頃、生地に触れるたびに気になっていた布耳の穴の正体がわかって、一同すっきり。

色糊を作る「カラーキッチン」

巾出しを終えた白い生地は、いよいよ捺染(なっせん/なせん)と呼ばれる布を染める工程へと進みます。次の部屋はバケツがいっぱい。ここは、生地を染める色糊(いろのり)を調液する場所。なんと「カラーキッチン」という愛らしい名前で呼ばれています。

機械で計算配合された染料は、調液する機械にセットされます。まず、糊が出て、染料が出て、水が出る。なんか、小麦粉入れて、卵入れて、牛乳入れて・・・みたいな感じ。まさにキッチンの調理風景のようです。

次々とバケツに色糊ができ上がっていきます。

大きなドラムの上には、あれ、どこかで見たような四角い色の生地が。そう、生地サンプルに一緒についていた色見本です。調液した色糊の色味をチェックするためのものだったのですね。

白い生地に柄が入る瞬間に感動!

カラーキッチンで色糊の作成が終わると、いよいよ捺染です。ずらりと並んでいるのはオートスクリーン捺染機。ここで1版ずつ色が刷られていくのです。

生機の加工が済んだ生地がオートスクリーンの機械に設置され、これから捺染が始まります。

カラーキッチンで調液された色糊を版に流し込みます。ここは手作業です。

刷り上がってきた生地を色見本と付け合わせて色味を確認します。

配色ごとに染め上がった生地は、ミシンで1枚につなげていきます。

田巻:オートとはいえ、色替えの際の洗浄や色糊の投入、力仕事がたくさん!

武井:プリントホヤホヤの生地! どんどんでき上がってくる〜。メンバーそれぞれのこだわりと思いが込められた柄と色。

猪俣:4人でこの柄を決めているときのことを思い出し、なんだか感慨深いです。色が変わるたびに、職人さんが洗浄している姿を見て頭が下がります。生地は5色展開なので同じ工程が5回続くということ。感謝感謝です。

捺染の作業はここまで。次は仕上げに進みます。

最終関門は職人の目!

捺染が終わった生地は、大きな蒸し器へ。この工程は「発色」といって、高温多湿の中で蒸すことで、色糊の色を生地に発色させます。色が生地に発色したら、次は「水洗(すいせん)」。不要になった糊剤を除去します。そして「仕上(しあげ)」。薬品などで生地の感触を柔らかくしたり、寸法を安定させたりします。

加工の工程がすべて終了すると、最後の工程は「検反(けんたん)」です。製品としてふさわしいかを人の目で検査します。この厳しい“関門”を通過できると、晴れてデビュー。ようやく梱包出荷となるのです。

工場には、ビニールでしっかりと梱包された生地が並んだコーナーも。「KONiTT(コニット)」もこんなふうに各地に旅立っていくのですね。

工場見学で布への愛情がさらに深まった

見どころいっぱいの工場見学は、懇切丁寧に説明してくださった担当者さんのおかげで、大充実。見学のハイライトは、やはり今回のプロジェクトの生地「KONiTT(コニット)」がプリントされる捺染の工程。すべての柄に出会えたのは感激でした。

田巻:いつも身近にあるプリント布は、こんなにもたくさんの工程を経て、使いやすく、美しい色になるのですね。かっこいい現場を拝見して、たくさんの刺激をいただきました。布への愛情が深まります!私が提案させていただいたシリーズ名、KONiTTがミミにプリントされているなんて、幸せです。

武井:私たちが普段何気なく扱っている生地。こんなにたくさんの工程を経て、こんなにたくさんの人たちが関わっているとは知りませんでした。真夏の作業はとても大変だそうです。作業員さんの真剣な眼差しと働く姿を見て、心の中で『ありがとうございます!』と叫んでいました。

11月下旬、ついに生地ができ上がってきました。2023年春頃のお披露目に向けて、さあ、どんな展開をしていくか。次のミーティングは作戦会議です。