コッカの布で作るソーイングレシピを紹介する「craft & sewing」は、コッカファブリックの人気コーナー。このコーナーをコッカと一緒に盛り上げてくれているのが、作品のデザインと制作を担うクリエイターの方々です。
コッカファブリックでは、不定期でクリエイターさんたちと意見交換をする「クリエイター座談会」を行っているのですが、今年3月、再び座談会を開催。今回のテーマは「こんな生地、あったらいいな」です。今回はコロナ禍ということで初のオンライン座談会。クリエイターの杉野未央子さん、猪俣友紀さん、田巻由衣さん、武井聡美さんの4名をお迎えして、あれこれ意見を伺いました。
▲上段左から、杉野さん、猪俣さん、田巻さん、コッカスタッフ。下段左から、コッカスタッフ、武井さん、コッカスタッフ
オンラインミーティングのため、実際に生地を見ながらお話しができないので、事前に4人に生地サンプルを送付。オンラインでもお茶会みたいに楽しく!との思いを込めてお茶菓子も一緒に送りました。
▲事前に送付した生地見本とお菓子。武井さん撮影。
▲こちらは田巻さんのアトリエ。
杉野未央子さん(以下、敬称略):レッスンが延期になったり、中止になったりしました。作品として作ったものは、おうちアイテムが多くなりましたね。特に鍋つかみやティーコゼーなどのキッチンアイテムが多かったです。あと、ハサミカバーなどのソーイングアイテムも増えたかな。試作したティーコゼーがうちに山ほどあります(笑)
猪俣友紀さん(以下、敬称略):いちばん大きく変わったのは、自分の作品をお披露目する場所がなくなってしまったこと。年に一度、ホビーショーや個展をメインにしていたのを、丸2年やっていないんです。対面で自分の作品を「こういうところ工夫しています」などを直接伝える場がなくなってしまったことで、作品づくりとしてのモチベーションが下がってしまって・・・。コロナ禍でマスクの作り方を紹介したことをきっかけに、教える側にまわろうと思い、You Tubeやインスタライブを始めました。いろんな方に自分がミシンをする姿を見せるようになったことも大きく変わったところですね。
▲猪俣さんのYou Tubeチャンネルより。
田巻由衣さん(以下、敬称略):確かに制作のモチベーションを保ちづらいですよね。作品を出品するイベントとかがないと、何を目標にしていいか・・・。私の場合、「やっぱり出かけたい!」という気持ちが強くて、バッグを作ったり、洋服を作ったりしています。出かけられないとなると、余計作りたくなります(笑)。
▲田巻さんが最近作ったというサロペット。生地はニットクリエイター蓮沼千紘さんデザインの「UZU sou」。
武井聡美さん(以下、敬称略):コロナ禍になったとき、家の中を変えていこうと思って、カーテンやクッションなど、布をメインに変えていきました。それがひと通り落ち着いたところで、もともと作っていた小さな布小物をリカちゃん人形に着せたりしてSNSで発信しています。今まで私は白・黒・グレーといった色合いの作品が多かったのですが、あまり外に出ないと色を使う作品が多くなってきました。色を使うとやっぱり元気が出るし、SNSにアップしても色を使った作品は反響が大きいんですよ。
▲武井さんのミニチュア作品。左のバッグは「UZU sou」、右のワンピースは「Paper Message」の生地で制作。
田巻:生地はほぼネット買いになっちゃいました。コロナ禍になったばかりの頃、近所の手芸屋さんに行くと、マスクのコーナーがすごかったじゃないですか。それ以来、新しい布が全然増えていなくって・・・。ぱっと目を引くものが本当に見つからなくなりました。
田巻:そうですね。それが今ではどんどんコーナーが小規模になっている感じです。
杉野:最近はうちの近所の手芸店も縮小されて、カットクロスばかり。だから欲しい量が買えなかったり、置いてある色数も少なくなっていたり。仕方がないので、このメーカーのこの生地というふうにネットで調べて買うことが増えてきました。そうしたことを繰り返すうちに、品番がわかれば買える、サンプルを取り寄せてから買える、といった安心感もあり、ネットで買うことが増えてきました。
杉野:私の場合、ストライプとドットが多いです。普通だったらストライプってどこにでもあると思いきや、やっぱり思っている色、思っている糸目、そういうのを探していくとなかなかなくて・・・。グレーとか、ちょっとした色の違いで、合ったり合わなかったり。グレーのストライプってすごく好きで、いっぱい取り揃えているんですけど、必要な量はない、買いに行かなきゃ、でもお店にいったら、ない、っていうことが多々ありました。
猪俣:お店は生地の種類があんまり増えていない印象がありますね。たしかに(マスクづくりの需要が増えた)ガーゼの頃は日暮里に行くと、そのコーナーができていて、ガーゼの種類はすごく増えたと思います。でも、柄物など、そのほかの生地はあんまり大きな変化がないような。私がチェックするのは、ローズ柄が多かったりするので、そればっかり見ちゃうんですけど。
最近は、普段使っていないキャラクター生地や動物柄などをあえて使ってみたり。実際に使ってみると、あ、こういうふうに使えるんだっていう発見もあり、刺激にもなります。コロナ禍になってからの2年は、さまざまな発見をするための準備期間かなと思っています。
▲「Chihiro Hasunuma」の[UZU sou]
▲「Paper Message」の「草原サーカス」
猪俣:インクジェットの生地は、いろいろなメーカーさんのスワッチをいただいたことがあるのですが、実際に使ったことはないですね。生地がちょっと違うんですよね。でも、お送りいただいた生地は質感がよくてリアルだからポーチによさそう。
田巻:(「UZU sou」のシリーズは)色違いも買おうと思っていたんですよ。すごい気に入っちゃって。
猪俣:インクジェットの生地って見ればすぐわかります。私自身はリアルすぎるものはあんまり使っていないのですが、パキッとした発色が好きな方はインクジェットの生地を使うと思いますし。好みかなと思います。
杉野:私はオックス(オックスフォードの略)の生地はすごく好きです。やっぱり切りやすいし、縫いやすいし、印もつけやすいです。レッスンのときでもいちばん生徒さんが扱いやすい生地かなと思います。オックスだと芯を貼らなくても、ある程度の形は出てきますし、小さいものを作るときも薄すぎると、形がしっかりでなくて、結局、芯を貼るんですね。薄い生地だから小さなものが作りやすいというわけでもないんです。
杉野:生徒さんと話をしていると、ダブルガーゼはバッグまでは作れないものというイメージがあるみたいです。実際にダブルガーゼでバッグを作って見せても、「え。本当にダブルガーゼで作っちゃっていいの?」というお声はどうしても出てくるんですね。実際、echinoのダブルガーゼでミニ巾着を作ってみました。ダブルガーゼは柔らかいし、扱っていても気持ちがいいのですが、ダブルガーゼで出ている布が、オックスも出たらいいなと思うこともあります。
▲echinoのダブルガーゼの生地で作った杉野さんのミニ巾着。
武井:今回、いただいたスワッチの生地でコッカさんの作品を作らせていただいたんですが、たとえば、ニットを再現した生地を、ニットだったらどんな作品になったのかな、っていうのをまず考えてしまいました。ニットだったらこうなるけど、布だったらこういうふうになるよって。クシャクシャ感っていうんですか、巾着の口みたいなものを表現したくて、今回、「リングハンドルバッグ」を作らせていただきました。作品写真を撮ったときに、ニットとは違う、不思議な感覚のクシャクシャ感が出ました。作品をご覧になった方に、プリント生地のよさを伝えられたらいいなと思いました。
▲武井さんが制作し、Craft& Sewingのコーナーで作り方を紹介した「リングハンドルバッグ」。
田巻:私は厚い生地が好きです。オックスでも薄いくらいに感じます。
猪俣:私は生地に合わせて作るものを変えていく感じですね。これを作りたいっていって、手芸屋さんやオンラインで生地を探すときは、厚みを重視します。素材もそうなんですけど、綿麻って書いてあっても、薄い綿麻ローンだったり、シーチングだったり。生地が届いてすごく薄かったりすると、これだと作れないなって。生地の風合いを活かしたいので、接着芯を貼ってしまうのももったいないなと思うこともあって。
その点、echinoの生地は、初めから張りがあり、洗えば風合いも出るし。バッグづくりでは、綿麻のものやリネン100%のものを使うことが多いです。「Paper message」の生地のように薄いものはギャザーを寄せるものを作るとか。
猪俣:そうそう。洋服になると、綿麻キャンバスよりも、シーチングのほうがいいとなったり。
猪俣:私は定番も大事だと思うんですけど、「どこで買ったの?」って思われる生地がいいと思います。ドットとかはバラバラになっているほうが、生地が切りやすいです。ストライプは逆にまっすぐのほうが切りやすい。だから(「Muddy Works」の)あんぱん柄ってすごくいいなと思って。だからすごく人気があるんだと思います。
▲猪俣さんのYou Tubeチャンネルより。あんぱん柄を使用。
▲「echino」や「Muddy Works」の生地で作った作品。猪俣さん作。
田巻:無地も好きなので、色合いが大事だと思います。ラメっぽいのが入っていたり、刺繍があったりとか、そういう生地にすごく惹かれます。お得に感じちゃう。刺繍は自分でするには大変なので。
田巻:本当はキャンバスのほうが縫いやすいんですけど、毎回、刺繍が入っているダブルガーゼのほうを選んでしまいます。
▲Craft&Sewingのコーナーで紹介した田巻さんの「まん丸マイクロミニバッグ」
▲「+HAyU fabric」の色違いで作った作品。田巻さん作。
猪俣:パネル柄って流行ったじゃないですか。1枚買うといろんな柄が入っている生地。ああいう生地、最近、見ないですね。
杉野:パネル柄といえば、以前、コッカさんの生地で、1枚買うだけで布合わせができている生地がありました。何枚も買うのが大変という、手芸をあまりしない方には、響くんじゃないかなと思います。私も気に入っていてよく使っていました。
▲1枚の中にいろいろな柄が入っていた生地。
▲柄の切り替えをそのまま活かした作品。杉野さん作。
杉野:いろんな色が混ざっているストライプとかの生地は、合わせるものの幅が広がるので集めています。素敵な柄布があって、それに何かを合わせたいときに、無地だけでなく、ストライプやドットがあると動きが出るのでいいなと思います。
杉野:そうです、そうです。
田巻:パネル柄だったら、余白が欲しいですよね。
猪俣:どこを切ってもバッチリ決まるような生地が欲しいです。
みなさんの近況報告から欲しい生地の話まで、さまざまな意見が飛び交った座談会。次回はどんな話が飛び出すことやら。乞うご期待!