visit artist file 014 浦佐和子さん(デザイナー)

自然の美しさと記憶のなかの風景をテーマに

自然のささやきが聞こえてくるような、軽やかなテキスタイル、「kuiskaus」(クイスカウス)。こちらのデザインを手がけたのが、フィンライド在住のデザイナー、浦佐和子さんです。
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Kokka-fabric.com (コッカファブリックドットコム以下KF)浦さんは2008年に武蔵野美術大学を卒業され、フィンランドへ拠点を移しています。活動の場としてフィンランドを選んだ理由は何だったのですか?

 武蔵美はかなりアートよりな自分の表現を追求する場で、卒業後はそれを元にもっとデザインに発展させる勉強がしたかったので、テキスタイルデザインが有名なフィンランドの大学院へ留学を決めました。活動の拠点はヘルシンキなのですが、街が綺麗で、人も親切で、何より自然がすぐ身近なところにあるのに魅了されて、ここで生活して制作をしてみたいと思い、大学院卒業後もヘルシンキを拠点に活動しています。
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(KF) テキスタイルデザインに興味を持ったのはいつ頃ですか? またそのきっかけ、出会いは何だったのでしょうか?

 大学2年生くらいです。実はちゃんとしたきっかけは覚えてないんですが、大学2年生の後期に専攻を決める時、元々絵を描くのが好きだったので、それを生かして人の生活の中で使われる物を作りたいなとぼんやり考え出して、それならテキスタイルかなと思ったのが始まりだと思います。その頃ちょうどマリメッコの表参道店がオープンして、マリメッコを見る機会が増えて、そこからも影響をうけたと思います。

(KF)作風についてお尋ねします。浦さんは、クレヨンで色の層をつくり、その上から爪楊枝で削って線や点を描く、いわゆるスクラッチ画のような手法で原画を描いています。いつ頃からこの手法で描いているのですか?

 大学4年生の卒業制作用に描いたドローイングからです。

(KF)卒業制作は、どのような作品だったのですか?

 テーマは集積の美、永遠の一瞬、といった抽象的なものでした。その頃はもっと自分の内側の表現を主にしていました。手法にたどり着いたきっかけは、テーマをもとに色々ドローイングをしていたのですが、その時ふと幼稚園の時に描いた手法(クレヨンで色々な色を塗って最後に上から真っ黒に塗って爪楊枝でひっかいて花火などを描く)を思い出してそれで描き始めてみたのが最初です。それが自分の表現したいものと合っていて、それでドローイングをどんどん描いていって今の手法に繋がって行きました。
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(KF)この手法の魅力ってどんなところでしょう?

 複雑な色と削った線や点から時間の流れや手のぬくもりのようなものを表現できるところです。また、最後まで出来上がってみないと自分でもわからないところが面白いです。

(KF)アアルト大学院での卒業制作のときには、石本藤雄さんに指導員をお願いしたそうですね。このときに石本さんから学んだことで、今の制作の糧となっているのは、どんなことでしょう?

 石本さんは本当に尊敬するアーティストで、その方に指導していただけるなんで本当に貴重な時間で、全てが制作の糧となっています。技術的な面だと、構成の作り方、色の選び方、完成までの流れなど色々教えていただきました。何より自分の作品を気に入ってくださってマリメッコに推薦していただいたことが私の支えになっています。

(KF)今年、コッカより発売した「kuiskaus」では、降り積もる雪、夏の湖、春の芽吹きなど、フィンランドで感じた自然のささやきをテキスタイルに落とし込んでいます。フィンランドの自然のどんなところに惹かれているのでしょうか?

 フィンランドの自然は雄大ですが、派手なダイナミックという感じではなく、どこか素朴でもの静かな印象があります。時には厳しい姿を見せるけど、いつも身近に寄り添って美しい姿を見せてくれる自然に魅力を感じます。
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(KF)浦さんの作風を、布という素材に落とし込んでいくとき、どんな発見がありましたか?

 色を出すのは難しかったです。コッカの担当者の方と工場の方にたくさん助けていただきながら試行錯誤を重ねて、原画のイメージに近づけていきました。

(KF)「kuiskaus」では、塩縮やバニランといった、タッチのある布にプリントしています。この素材のイメージはどうやって決まるのですか?

 私のスクラッチ画の作風から、布の手触りも原画のイメージを生かして選びました。塩縮は使ったことがない技術だったので、ぼこぼこした感じや色の重なる感じを表現できたり、手触りに一工夫を入れられたので楽しかったです。
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(KF)「kuiskaus」は、2017年の1月展で第2弾が発売となりました。第2弾では「MAATILA」(農場)が新柄で追加されました。「LUMITUISKU」(雪溜まり)や「KUPLAN KUKKA」(泡の花)と比べると、絵画的な印象を受けます。ご自身は、この生地でどんな製品をイメージしますか?

 MAATILAは空から見下ろした時に見える平地が模様のように見えるのを表現したもので、どこを切り取っても幾何学模様のような景色が面白くでると思います。第1弾より小柄なので、ポーチのような小物にも使えると思います。

(KF)「kuiskaus」は、発売後、ソーイングを楽しむ方たちにより、さまざまなアイテムが作れるようになりました。他の人が作るアイテムのなかで特に印象的だったのはどんなものですか?

 ワンピースがやはり印象的です。着た時に風にゆれる感じや少し透けるような感じが良かったです。
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(KF)毎日の暮らしはどんな感じなのでしょう?

 今は育児をしながら制作をしているので、普段は子供に合わせた生活をしています。公園へ行ったり、散歩したり、お買い物をしたりして日中を過ごして、あとはお家の事をして、ご飯を食べて、お風呂に入って、寝かし付け・・・と普通の母業をしています。まだ保育園に行っていないので、制作は子供が夜寝た後です・・・一緒に寝てしまうこともしばしばです。

(KF)仕事場はどんなところなのでしょう?

 家の一室を仕事場にしています。

(KF)仕事をしていくうえでも、日々の暮らしでも、浦さんがいちばん大切にしていることは何ですか?

 ささいな喜び、幸せを大切にすることです。

(KF)浦さんは2014年に初めての個展「Sawako Ura Exhibition Muistin maisema/ 記憶の風景」を東京の「doinel(ドワネル)」で開催しました。今後、日本あるいは海外で作品展を開く予定はありますか?

 今年2017年6月17日から愛媛県松山市にあるギャラリーMUSTAKIVI(http://www.mustakivi.jp/)で個展をさせていただくことになっています。

(以下の写真は、2014年、「doinel」で開催された個展の風景)
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(KF)石本藤雄さんのギャラリーで個展が開催されるのですね。どんな作品が並ぶ予定ですか?

 主に「kuiskaus」の原画のようなクレヨンのスクラッチ画を展示する予定です。とても素敵なギャラリーなので、機会があれば足を運んでいただければ嬉しいです。

(KF)今後の抱負をお聞かせください。

 今年は制作活動を精力的にしていこうと思います。

(KF)コッカファブリックの読者に一言メッセージをお願いします!

 これからも”kuiskaus”をよろしくお願いします。