コッカファブリック「クリエイター座談会」開催レポート

「布から始まる楽しい暮らし」を提案しているコッカファブリックを運営しているのは、日本の生地メーカー、KOKKA(コッカ)です。「布が大好きな人、手作りが大好きな人ともっともっとつながりたい!」。そんな熱い思いを胸に、2013年の4月にオープンしたwebサイトです。

オープン当初から人気なのが、毎週水曜日にアップする、コッカの布で作るソーイングレシピ「craft&sewing」のコーナー。なんと今や300以上のレシピをアーカイブするまでになりました。

毎回、小物、バッグ、洋服とバラエティに富んだ作品で、私たちと一緒にサイトを盛り上げてくれているのが、作品のデザインと制作を担っているクリエイターさんたちです。今回、コッカファブリック初の試みとなる「クリエイター座談会」を開催。書籍やブログ、SNSで大人気のみなさんに集まってもらいました。本音トークが炸裂した座談会の様子をお伝えします!

座談会が行われたのは今年の4月。会場は、東京・代官山の「しロといロいロ」。パンの生地とテキスタイルの生地の衣食なカフェです。

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2階がカフェになっています。

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座談会の出席者は、写真右から、yunyunこと猪俣友紀さん、田巻由衣さん、komihinataこと杉野未央子さん、そしてあんりこさんの4名。猪俣さん、田巻さん、杉野さんの3人は、小物やバッグなどを制作するハンドメイド作家、あんりこさんは主に洋服をつくっているソーイング・エキスパートです。

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気になるのはどんな生地?

猪俣友紀さん(以下、敬称略) 昨年から「布を探す旅」を始めました。やっぱり楽しいですよ、ヨーロッパの布。いちばんワクワクします。いつか布のデザインをしたいなと思っているんですけど、絵が描けないので、まずは参考になる布を探そうと思って・・・。デットストックの生地を見つけて、そこから自分でできたらいいなって。自分の生地をつくりたい。残したい。同じ生地ってなかなか手に入らないですから。

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KF(コッカファブリック:以下、KF) そうですね、メーカーも一度作ったら、同じものを作らないことが多いですし。

猪俣 そう、だから一期一会なんですよね。ブログの読者が私の作品とおんなじ布を使いたいといっても、ないんですよ。自分が使ってきた端切れを何年もためて、作品を作っていることも多いので。

田巻由衣さん(以下、敬称略) 雑誌などの制作依頼は、手に入る布で作ってください、と言われることが多いのですが、個人的には変わった布が好き。織り物っぽいものやアジアンテイストやエスニックとか、そっち系なんですよ。子どもたちがダンスをやっているので、服地向けの生地もよくチェックします。キャンプなどアウトドア系も好きなので、外に置いて映えるものも好きですね。

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杉野未央子さん(以下、敬称略) あまり考えずに、ただただ好きなものをひたすら持ってきました。

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あんりこさん(以下、敬称略) やっぱり杉野さんの好きな布は、柄がちっちゃいですよね。作品に向いているサイズを選ばれるんですよね、きっと。

杉野 街の手芸屋さんも入るし、ショッピングモールの中の手芸屋さんも入るし、ネットも見るし、もうとにかく布を探して、探して、って感じなので。

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これはホビーショーで見つけたスペインかどっかの生地。あまりない感じの色合いで、気に入っています。

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あんりこ 多分、服地だと思うんですよね。

杉野 なかなか出会えないですが、「柄は奇抜だけれど、色が単色」という生地もツボです!

洋服づくりは、柄より素材が大事

あんりこ 私は服を作ることが多いので、柄よりも素材感が気になります。服を作るのに、やっぱり綿麻キャンバスとかだと、できる形が限られちゃう。服を作るインスピレーションが湧いてくるのは、やっぱり動いてくれる生地。同じコットンでもちょっとレーヨンが入っていたり、テンセルが入っていたりするだけでも、全然変わります。

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服を作るときも、ただの無地をどう自分らしく生かそうか、自分らしく変えていこうかっていうことを楽しんでいます。洋服を販売していたら、50枚作るのもシルクスクリーンでバンバンバンってやっていけばいいんですけど、自分のための洋服だったら、おんなじ図柄で何十着も要らない。だから1枚、2枚にかけられるコストを考えて、これなら想い通りにいくなっていうのを生み出します。既製服みたいな手法をどうやって個人レベルに落とすか。だから、生地自体はただの白い布で楽しめるんです。

田巻 私も「Tシャツくん」(シルクスクリーンプリントができる機械)の小さい版を買って、自分で描いたものをパソコンで版を起こして、無地にプリントしたりしています。だから、結構、無地も好きです。帆布とかも大好き。使いやすいし。接着芯はあまり好きじゃなくて、布のままの厚さで使いたいほう。

布の街、日暮里ってどう?

あんりこ 私は奥日暮里ばっかり。ほぼ服地っていう店。鴬谷から入ると奥日暮里に近いんですよ。「トマト」にはほとんど行きません。

杉野 私は「トマト」大好き!

猪俣 私も「トマト」は必ず覗きます。その手前のヨーロッパの生地を置いている店とかも行きます。最近はネットではほとんど買わなくなったかなあ。届いたときに色が違うので。

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田巻 オーソドックスなもの、こういう感じだよねってわかっているプリント地とかは、ネットでもいいかも。でも欲しい布は自分で探しに行きます。

あんりこ 私は、持ち帰れる分だけ、って決めています。

猪俣 リネン買うなら、「安田商店」もよく行きます。

あんりこ 「安田商店」は、こういうテイストっていう感じでとり揃えているじゃないですか。でもそれをピンポイントで抜き出せば、掘り出し物は山ほどあるような気がする。

杉野 「安田商店」は、色数も多くて、好きなものがたくさんあって、いろいろ買うとすごい重さになって腕が抜けそうになっちゃう(笑)。メーター100円なんていう布があるお店を見つけて、「あ、買わなきゃ」ってレジに持っていったら、5mからだよって言われたり。

布の収納、どうしてる?

あんりこ 杉野さんは雑誌の取材記事などを見ると、すっごくきれいに布を整理されていますよね。

杉野 みなさんに見せられるコーナーはごく一部です(笑)。最近はリビングの3人掛けソファを占領しちゃって、ぎりっぎり一人座れるくらいのスペースを残して、あとは全部、布。

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猪俣 端切れは全然、減らないです。最近やっと古い布はもういいかなと捨てられるようになって。それまではちっちゃい端切れでも全部残していました。

田巻 捨てたとたん、後悔したりしますよね。私は、作品を頼まれたときに、探しやすいような分け方をしています。

あんりこ 洋服づくりは、バッグや小物に比べると面積があるから、床で裁断することが多いので、床は空けておかないとだめなんです。端切れを残す大きさの目安は、洋服のポケットの手前布が取れるサイズです。

杉野 私の場合、色が重要なので、無地と柄ものに分けて、色別に並べています。畳んで重ねた布を抜くときは、クリアファイルを差し込んで取り出します。あんまり小さな端切れは意外と使わないんですが、「あの生地があと少しあれば!」ってなったときに役に立ったりします。

作品撮りは、自撮りがいちばん!

KF あんりこさんはSNSでよく着画をアップされていますが、普段、ご自身が作られた服も着ているんですか?

あんりこ 今日着ている服は全部です(笑)。同じように服をつくっている人から見て、こういう体型で、こうふう雰囲気で着ています、というのがわかるようにしています。その人の暮らしぶりまで透けて見えると、もっと楽しい。撮影場所はうちの玄関だったり、外だったり。スマホで撮っていて、三脚は使っていません。ゆがみを直したり、編集も結構しています。スタイルをよく見せようというよりは、同じパターンの型紙で、「あ、こういうのができるんだ」っていう情報交換が目的でもあるので、形が分かることが重要。撮影は自分で撮ったほうがいいので、自撮りです。

全員 旦那さんには絶対頼めません。下手すぎて(笑)。

猪俣 私は、ブログはデジイチ(一眼レフカメラ)で。作品を撮るときは三脚を立てて、窓際の決まった場所で撮影しています。

田巻 背景になる壁紙を作ったりしていますね。でも、自撮りはできません。やむなく息子に撮影を頼むこともあるけれど、これが下手なんですよ(笑)。

杉野 私は娘に(作品を)持たせています。娘が持つほうがいいんですよ。手がきれいだから。

生地づくりに興味津々!

猪俣 以前、自分の生地をつくりたくて、海外のメーカーに頼んだら、柄が全部ブレていたことがありました。インクジェットみたいだったので、生地のせいだったのかもしれません。ちょっと柔らかい生地だったんですね。生地の種類によりちょっとずれるっていわれました。もう一度、やり直してもらったらきれいな布になったのですが、でもそこから先は話が進みませんでした。

田巻 以前、キットをつける雑誌で布をつくってもらったことがあります。私が描いた絵で布を作ってもらったんですけど、でき上がった布がすっごく薄かったことがあります。あと、洋服の話ですが、海外のサイトで柄が気に入って買ったけれど、裏が真っ白(笑)。これって裏が見えたときに不自然なんですよね。ちょっと恥ずかしくて着られませんでした。

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KF 同じ生地でも、コッカが作っている手法の生地と、クリエイターさん自身がインクジェットで作る場合では、でき上がったときにやっぱり風合いが変わってくるんですね。私どもで流通しているような生地の風合いが好きな方もいるし、小ロットのインクジェットの生地のほうが好きな方もいます。それぞれなんですよね。

あんりこ ユニクロの「ユニクロカスタマイズ」は、びっくりするほど精度がすごかったですよ。形は決まっていて、配置や色をパソコン上でお願いするんです。すんごいきれいでした。

全員 へえ〜。そうなんだ。

あんりこ 転写プリントなら1枚からプリントしてくれます。すごい量なので、品質を保てるのかもしれません。

KF お話を伺っていたら、布はつくりたいけれど、その背景がわからないという感じですよね。それを知ることで、どんな手法で作ったらいいかっていうのが、見つかっていくのかなと思います。今度、染工場ツアーとかを企画して、希望する方をお連れしたいですね。

全員 ぜひ、やってください!

欲しいのはこんな布

あんりこ コッカさんに質問ですが、生地を作るときは、コッカさんでよくあるリピート間隔は固定なのですか? 大きい柄の生地だったら、逆にもっとでかくしてほしい(笑)。小さいものも大きいものも作れるように、と平均値を取っている大きさだと面白みを感じないことが結構多くて。そういう平均値ででき上がった布で作ると、仕上がりがイマイチあか抜けなくて。そういう布が多いなか、洋服を作る人に評判がいいのは、naniIROの生地。好きな人が多いです。naniIROの生地は全面に使っても手作り感が出ないんです。

田巻 うちの近所には布を売っているところがないんですよ。最近、手芸屋さんもどんどん減ってきています。そのかわり100円ショップはあります。セリアなんかは、カットクロスくらいの大きさですが、布も結構、充実してきています。

猪俣 ネットショップでもオリジナルの布を出していますね。今、インスタでタグとかつけられるので、それで販売先を辿っていける。でも、みんなと同じものは、なるべく使いたくないですよね。どこで見つけてきたんだろう、っていう生地を使いたい。だから海外で探してきたりするようになりました。雑誌や本とかで作品を発表するときは、みんなが作れるように手に入りやすい生地を使ったりするけれど、販売するものはやっぱり同じ生地はイヤ、自分のテイストを出したいですね。

KF だから自分のオリジナルの布が作りたいというところにつながるんですね。

猪俣 自分の生地を作ったら、それはいろんな人に使ってもらいたいなと思うし、お店に置いてもらいたいなというのが最終的な目標です。

布の話で終始大盛り上がりだった座談会。帰りしなにコッカより、布のお土産が。「好きな布を選んでください!」の声に、またもやスイッチが入ってしまったみなさんでした。

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お土産の布で作った作品を公開!

座談会後、あんりこさんと杉野さんからは、「お土産の布で作りました!」と作品の画像が届きました。

あんりこさんが持ち帰った布は、echinoの刺繍布「FLAG」。柔らかでふんわりとした風合いの綿麻シーチングは、まさに洋服づくりにぴったり。グレーニットをプラスして、デザイン性の高いブラウスを作ってくれました。

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echinoの刺繍布「FLAG」

杉野さんが持ち帰った布は、echinoの刺繍布「sprout」。小さな芽や植物のモチーフがブルーワークの刺繍で描かれています。刺繍糸の青にピッタリな色合いのブルーリネンを口と底に合わせてくれました。「楕円の底とタックからくる丸っこさがポイントです。着画モデルは次女です」と杉野さん。

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echinoの刺繍布「sprout」

みなさん、ありがとうございました! またお会いしましょう。