visit artist file 018 テス・ダロウ & カーラ・ヤナガワ(Egg Press)

世界をやさしさでいっぱいに

Egg Press(エッグプレス)は、1999年から、オリジナリティーあふれるレタープレス(活版印刷)のグリーティングカードやライフスタイルグプロダクトを作り続けています。人々の暮らしを豊かにしたいーそんな想いを込めながら。2019年、アメリカ・ヒューストンで開催された「インターナショナル・キルトマーケット」で、Egg Press初のファブリック・コレクションがデビューしました。Egg Pressの創設者兼共同クリエイティブ・ディレクターのテス・ダロウさんとカーラ・ヤナガワさんのインタビューをお届けします。

(コッカファブリックドットコム以下KF) 2019年、Egg Pressは20周年を迎えました。1999年から本当にたくさんのプロダクトを生み出してきたわけですが、まず、Egg Pressについて教えていただけますか?

テス・ダロウ(以下TD) 1999年にEgg Pressを始めたのは偶然だったです。私はレタープレスの工程がすごく好きだったので、テキスタイルデザインの経験を生かして、何か新しいことができるのでないか、と思ったんです。それから、レタープレスで小さなイラストや絵文字を使って多くのグリーティングカードをデザインしました。

カーラ・ヤナガワ(以下KTY) テスはレタープレスのグリーティングカード業界に革命を起こしたんです!

(TD&KTY) 私たちが育ったのはインターネットや携帯電話が普及する前。あの頃は手紙を書くということは生活の一部でした。テクノロジーがどれだけ暮らしを便利にするかを実感すると同時に、デジタルだけの世界では不十分だ、ということもわかりました。私たちは、直接会ったり、あるいは、手に触れられる形、アナログの手紙を通じて、人と人とのつながりを必要としているのです。


▲“Somebunny Loves You”は、背景にイラストパターンを用い、メインのうさぎを白抜きにしたユニークなデザイン。Somebody=誰かをSome bunny(うさぎたち)と言い換えて、うさぎ(誰か)はあなたを愛しているという意味。


▲Polygon(ポリゴン・多角形)シリーズのカードは、モダンなデザインで私たちのお気に入り。コントラストが美しい封筒とのセットで、さまざまなシーンに使える。

(KF) 今まで、たくさんのデザインを手がけてきました。デザインをする上で、インスピレーションの源は何ですか?

(TD) カードをデザインするときは、じつに多くのことから刺激を受けています。私たちはリサイクルショップめぐりが好きなのですが、なかでもテキスタイルは新しいもの、古いもの問わず、大好き。子ども向け絵本のイラストにも目がありません。

(KTY) その通り。つけ加えるとしたら、北欧や日本のデザインや美意識からもインスパイアされています。たとえば、日本を訪れた際は、日用雑貨からパッケージ、服のデザインまで、その色づかいに魅せられました。と同時に、日本の職人の技や伝統工芸に宿る手仕事のすばらしさも堪能しました。


▲ “Heck Yeah”, “Hell”, “Sorry Things are Heavy” は、思いやりや悔やみ/共感/友情のカテゴリーのカードです。用途ははっきりしていないけれど、愛情や思いやりを表現したい、といったときに。

(KF)カードづくりと布づくり、その共通点と相違点を教えてください。

(TD)すべてのパターンは、私の好きなものをデザインしたもの。パターンを繰り返すデザインは、カードづくりを始めた当初から私たちの製品にありました。グリーティングカードは布に比べて小さめのキャンバスですが、工程はほぼ同じです。カードをデザインするときも、テキスタイルパターンをデザインするときも、サイズや色、模様のつながりを考えます。

(KTY) 印刷する工程もほぼ同じです。デザインしたり、配色を考えたり、という工程は、私たちにとって自然なこと。

(KF)コッカから発売された 「IMAGINARY NATURE」シリーズについてお尋ねします。Egg Press初のテキスタイルシリーズとなったわけですが、テーマやコンセプトについて教えてください。

(TD)私たちはフラワーパターンをデザインするのが大好きですが、それは私たちが考えだした花で、伝統的なデザインではありません。「Imaginary Nature」シリーズは、いわば花についての私たちの解釈、といったところでしょうか。

(KTY)私たちは「もうひとつの世界にある花」というアイデアが気に入り、そんなふうにこのコレクションをとらえることに惹かれました。「となりのトトロ」に出てくる、煤の妖精、まっくろくろすけ、みたいに。

(KF)dots(ドッツ), big flower(ビッグフラワー), fat flower(ファットフラワー), wild floral(ワイルドフローラル), seven stems(セブンステムズ),fluffy flora(フラッフィーフローラ)という6つの柄は、どのように思いついたのですか?

(TD)多くのパターンは、私たちのカードのシリーズから採用しています。そのほかのものはシンプルかつ存在感のあるものにデザインしました。

(KTY) サイズやパターンにバリエーションをもたせて、いろいろな用途に使えるも生地を提案しました。

(KF)「IMAGINARY NATURE」シリーズを制作するうえで、もっともワクワクしたのはどの工程でしょうか?

(TD)グリーティングカードづくりでは、プレス機からカードが出てくる最初の瞬間。布づくりも同じで、日本から最初の布サンプルが届いたときは感動しました。

(KTY) 「Imaginary Nature」シリーズが、反物となって小売店に並んだのを見たときは感動! 私たちは、布小物やホームプロダクト用の布をデザインしたけれど、これは私たちにとって初めてのヤード単位の製品となりました。

(KF)「IMAGINARY NATURE」シリーズを制作するうえで、もっとも大変だったのはどの工程でしょうか?

(TD)どの色をどのシリーズに選ぶか、が難しかったです。私たちが日頃接しているお客様はステーショナリーを買ってくださる方なので、布については未知数。最終的にはコッカの判断を信じました。

(KTY)サンプルを見てからというもの、コレクションができ上がるまで待ちきれなかった、ということかしら。

(KF)「IMAGINARY NATURE」シリーズで作るとしたら、どんなアイテムにおすすめですか?

(TD)薄手の生地はパジャマや幼児向けのワンピースに向いているかと。厚手の生地ならシンプルなエプロンやビローケースなど。

(KTY)メンズのボタンシャツなんかもいいですね。コッカがサンプルで作ってくれた作品も気に入っています。



(KF)最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

(TD + KTY)私たちは、美しさと品質を追求する会社とのコラボレーションを大切にしてきました。コッカはその両方を兼ね備えた会社で、製品の確かな仕上がりにとっても満足しています。

(KF) どうもありがとうございました。