コッカの布で作るソーイングレシピを紹介する「craft & sewing」は、コッカファブリックの人気コーナー。このコーナーをコッカと一緒に盛り上げてくれているのが、作品のデザインと制作を担うクリエイターの方々です。
「作り手さんの本音をもっと聞きたい!」と企画した「クリエイター座談会」。今秋、第2回目を開催しました。
第2回目の座談会は、コロナ禍の密を避けるため、2名ずつ、午前と午後の2回にわけて開催。午前の部は、田巻由衣さん、武井聡美さん、午後の部は、猪俣友紀さん、杉野未央子さんをお迎えしました。part1では、午前の部の座談会の様子をお届けします。
ステイホーム期間に作ったものは?
コッカファブリック(以下、KF):新型コロナウイルスの感染拡大で4月に緊急事態宣言が出されてから外出自粛生活が続いていましたよね。ステイホーム期間はどんなふうに過ごしていましたか?
武井聡美さん(以下、敬称略):家族が家にいることも多くなったので、それぞれ自分たちの部屋のレイアウトを変えたり、ベッドの位置を変えてみたりしていました。家で使うものを縫ったり、クッションカバーをすべて取り替えたり。
田巻由衣さん(以下、敬称略):家にいる時間がすごく増えたので、リビングのカーテンを全部縫い直しました。
KF:武井さんも田巻さんも、育ち盛りのお子さんがいらっしゃいましたよね。
武井:はい。上の子が高校3年生で、下の子が中学2年生です。二人とも男の子で野球をやっています。“野球少年あるある”で、サッカー少年に比べたらおしゃれじゃない(笑)。そこで、「部屋からおしゃれにしてみたら?」と言って、家にある生地の中から息子たちに選んでもらって、カーテンやクッションカバーを変えるところから始めました。
▲武井さんの息子さんの部屋。生地棚で眠っていたという布でクッションカバーを手作り。
家庭科の宿題がマスクづくりだった
武井:下の子は家庭科の宿題がマスクでした。
KF:そうなんですか! 田巻さんのお宅ではどうでした? 同じく男の子ですよね?
田巻:うちの子は、ミシンが怖かったみたいで手縫いで作っていました。
武井:学校でもらってきたマスクが真四角で、アベノマスクでした(笑)。では立体マスクを、ということで、綿ポリエステルの学校用のYシャツを外側に使い、内側はダブルガーゼにして、一緒に作りました。1枚のYシャツから4つマスクが作れました。
田巻:マスクは、一瞬でみんなが作り始めましたよね。作らない人も作るようになった。私自身は今までマスクは作っていなかったのですが、マスクの作り方やいちばん涼しいのはどれ?など、聞かれることが増えました。
手芸店の生地売り場はマスク一色に
KF:コロナ禍になってから、新しい布を探しに生地屋さんとかに行きましたか?
田巻:1回、行ったら、半分くらいがマスクコーナーになっていて、うんざりしちゃって。もうコロナのことばっかりで、行っても楽しめないんですよ。
武井:糸もマスクに使う白と生成りが全部、売り切れていて・・・。1人何個までとか。こんなことがあるんだって。レジもすごく並んでいました。
田巻:こんなに賑わっている手芸店ってなかったよね、というくらい。
KF:ネットショップは利用されていましたか?
武井:コロナ禍になって最初のうちはネットショップも機能しませんでした。途中で届かなくなったり・・・。クローズしているお店もありました。
マスクの次に作るなら、カーテンがおすすめ
KF:コロナ禍のマスク需要で、本当にたくさんの人がマスクを作るようになりましたよね。マスクづくりから手作りに目覚めた人に、おすすめのソーイングアイテムはありますか?
武井:カーテンがいいなと思います。カーテンの上につけるカーテンテープというのがあるのですが、私はそれを使っています。10cm幅で縫うところに青い線が入っていて、その上から縫うだけなので、すごく便利。
田巻:以前はカーテンのひだを作っていたのですが、ひだをつけると布幅が足らなくなってしまうので、作らずに買おうかなと思って悩んでいたとき、お店で「ひだなし」というのを見つけたんです。ひだなしにすると、おしゃれだし、布幅そのままでちょうどいいことに気づきました。90cm幅で窓半間分、4m買うと掃き出し窓一面に使えます!
武井:男子の部屋とか、ひだがないほうが逆におしゃれだったりする。
田巻:カフェカーテンには、クリップを使っています。
武井:カフェカーテンは上側を折って、つっぱり棒を通し口に入れるだけ、これがいちばん簡単。つっぱり棒は100円ショップで手軽に購入できて、60cm×90cmの上げ下げ窓なら生地が1mあるとちょうどぴったりなんですよ。
外出した気分になるのは、ランチョンマット
KF:布づかいでおうちの雰囲気が変わるのがわかったら、これからソーイングを始める人にとっては嬉しいですよね。他にはどんなアイテムがおすすめですか?
武井:ランチョンマットは、外出した気分になります。
田巻:私は、おうちキャンプのアイテムを作りました。まっすぐ縫ってゴムをつけるだけ。ビールとか入れて、家でも楽しめるようにしてみたり。
KF:コロナ禍で3ヶ月くらい、土日に何も思い出がないっていうのは初めての経験かもしれません。おうち時間ってよく聞くんですけど、こんなふうに手作りして楽しむと記憶に残りますよね。
既製品を買うか? 自分で作るか?
KF:何でも作れてしまうお二人が、これは既製品で、これは作ろうって、どうやって決めているのですか?
田巻:既製品のほうが安い場合や流行りのものは、買ってしまう場合が多いかもしれません。流行りのバッグもGUとかぶるときもあります。「それってGUで売っている、しかも安い」ってなっちゃう。PVCのバッグとか、すごくそう思いました。
武井:流行りものだったら、安いなら市販で買っちゃってもいいのかなっていうのがありますね。
田巻:やっぱりこだわりのあるものは自分で作りたいかなって思います。
アクセサリーを作る機会が減って寂しい
KF:マスク作りもひと段落した感がありますが、最近はどんなものを作っていますか?
田巻:お仕事で依頼が多いのは、エコバッグやレジかごバッグ。ふだん、そこまで大きなバッグは作らないんですけど。ナイロンをすごく使った感じです。
武井:アクセサリーを作る機会が減りました。
田巻:出かける予定がなくなっちゃったので。マスクにピアスが合わなかったり、作りたいけれど、イベントもなかったり。装飾品を作る機会が減ってしまって寂しい思いです。これからまた復活してほしい!
KF:マスクに似合うメイクの本なども出ていますしね。
武井:出かける用事があれば、それに向けて作ったりできるけれど、自分用に作ることもなくなってしまったので。
田巻:今までよりコンビニに行くようになったので、サコッシュを使うことが増えたかもしれないです。
▲田巻さん作。echinoの生地を使った「2wayクラッチバッグ」
武井:私は逆で、まとめて買うことが多くなった。エコバッグも大きい感じ。
田巻:うちは週に1回、車でスーパーに行きます。あとは自転車なので。週に1回はレジかごバッグで、それ以外はコンビニにサコッシュで。
作品のデザインはどうやって思いつく?
KF:田巻さん、武井さんには、コッカファブリックでもいつも素敵な作品を作っていただいておりますが、新しい作品のデザインやパターンは、どういうふうに考えつくのですか?
田巻:絞り出しています(笑)。思いつかないときは昔のデザイン画とかを開いたりします。
武井:出かけるのが好きなので、ウインドーショッピングじゃないですけど、いろいろなものを見て刺激を受けています。流行りのスタイルからバッグの持ち手の太さやサイズ感まで。マチの幅はこのくらいのほうがいいとか、丸みがあるほうがいいとか。
▲武井さん作のechinoの生地を使った「たためるエコバッグ」は国内外から大反響。
KF:生地を決めてから、作るアイテムを考えるのか、作るもののイメージを膨らませてから、それに合う生地を探しに行くのか。どちらが多いですか?
田巻:どっちもあります。ただ、作るものを決めてから生地を選ぶのは、ぴったりって思えるものを見つけるのが難しいです。だからそのパターンは少ないですね。
武井:私は布から考えることが多いです。作ろうと思っていても生地の薄さとかでだいぶ変わっちゃうので。
KF:生地を決めるとき、おうちのストック生地を思い浮かべたりしますか?
田巻:ストックはあまり使わないですね(笑)。
武井:だからたまっちゃうんですよね。私は、ストック生地は目につかないようにしまっちゃうんですよ。目につくところにあると、ウキウキワクワク感や、ときめきがなくなってくるので。布を入れる袋を決めて、ときどき袋をあけるのが楽しみ。
田巻:布のままのほうが可愛いんじゃないかって、いつも思う。アイテムに仕立てるより、たたんであるほうが可愛かったり。
今、欲しい生地はどんなもの?
KF:コッカの秋の新柄は、来春に向けての入園入学用の生地がすごく多いんですよ。どんな生地が気になりますか?
武井:恐竜系。コッカさんの動物はカッコいいんですよ。私は男の子用のオーダーを受けることも多かったので、可愛いすぎちゃうデザインが多いなか、コッカさんの生地はカッコいいです。文字を入れてくれるのがすごく嬉しかった。ステゴサウルスとティラノサウルス。野球の生地も探しているのですが、すごく少ないんですよ。アメリカから入手したこともあります。
▲武井さん作。恐竜や乗り物など、男の子が好きな柄を使ったレッスンバッグと体操服袋。
田巻:コッカさんの生地って、面白いけど、おしゃれですよね。
武井:無地の生地や素材感も気になります。
田巻:色合いとか見るのが楽しいので、くすんだ感じの色合いがいいか、蛍光色に近いものがいいか、など。そういう無地の色を見るのがすごく好きです。
おしゃれなサンプル帳が欲しい!
KF:色合いや素材感は、実際に見てみないとわからないですよね。コッカのオンラインショップでは、ご注文前に、お好みの生地サンプルを無料でお届けするサービスも行っているんですよ。
田巻:サンプル大好き! いっぱい見るのが好きです。
武井:並べておくだけでも楽しい。サンプルは有料でもいいと思っているくらい。丸いリングをつけたサンプル帳もあって、それがとても可愛いんです。
田巻:サンプル帳が可愛いのっていいよね。
武井:私が見つけたサンプル帳の中には、11号帆布のなになにカラーとか、グラデーションになっているものもありました。置いておくだけでも可愛い。
田巻、武井:おしゃれなサンプル帳がいい!
武井:小さすぎるのではなく、手触りがわかるくらいの大きさがいい。生地もピンキングばさみで切ってあるといいですね。
KF:お二人が入手したサンプル帳には、品番も書いてあるのですか?
武井:あります。その書き方もおしゃれなんですよ。私はフォントマニアで、フォントって流行りがあるじゃないですか。たとえば、ゴシックだけじゃなくて、生地に合わせてアンティークっぽいフォントを使っていたりすると嬉しくなります。
KF:見るだけでときめくものって大事ですよね。
武井:作りたくなる感がアップする。
田巻:クリップでサンプルが留まっているだけでも可愛いよね。
生地の商用利用ができるか、できないかが気になる
KF:以前からよくお問い合わせをいただく内容に、生地の商用利用ができますか? というものがあります。コッカの人気ブランドのechinoも、今は商用利用可能なのですが、ご存知ない方がすごく多くて。ある手芸好きの方が、「コッカのechinoが商用利用OKになっている」って、Twitterでつぶやいたら、その日はオンラインショップにいつもの7倍くらいのアクセスがありました。
武井、田巻:商用利用できるか、できないかはすごく気になります。
KF:ユーザーのみなさまにアンケートを取ったときも「何を基準に買いますか?」の項目に、「商用利用できるかどうか」と回答した方がすごく多かったんですよ。今はコッカのオンラインサイトのcoccaのほうに、商用利用についてを明記しているのですが、とてもアクセスが多いです。
生地の背景を知ると、制作意欲がわく
KF:お二人は、生地ができるまでの工程とか、手作りの背景とかのストーリーって、興味ありますか?
武井:生地の歴史とか、デザイナーさんの思いとかって、知ったうえで縫うと全然違うんですよ。
田巻:自分が作ってみた生地のコンテンツがあったら、それを見てみたいって思いますけど、その記事になかなかたどり着けない。
武井:「この生地についての説明はこちら」とか、誘導を入れたらいいかもしれないですね。結構、デザイナーさんやシリーズを知らないで生地を買っていることが多く、使ってみて、初めて気づくことも。それがわかると、次の新作いつかなって心待ちにすることもあります。
▲創業100年の染色工場の紹介記事。
KF:現在、コッカファブリックでは、ユーザーの方々の作品投稿みたいなコーナーを作ろうと企画中です。題してハッシュタグ大作戦。インスタグラムと連動して、特定のハッシュタグをつけてくれた方の作品が全部見られるようにします。
武井:いいと思います! 作ったら、見せたいですものね、やっぱり。私たちが作った作品も載ったとしたら、そこに裏話載せちゃう(笑)。
KF:新しい試みをしながら、ユーザーの方はどこを見てくださっているのか、探っていきたいと思っています。ぜひ一緒になって面白がってください。
「クリエイター座談会」は、part2へと続きます。