泥染めの世界観を表現した「MUDDY WORKS」
泥染めの布やオリジナルテキスタイルを使って、布ものの雑貨を中心に製作されているトモタケさんは、朝武雅裕さん、朝武広子さん夫婦二人のユニット。その優しい雰囲気をプリント生地にした「MUDDY WORKS」を2012年より展開しています。トモタケのお二人に泥染め作家としての活動や「MUDDY WORKS」についてお話を伺いました。
“泥んこ遊び”の延長に見つけた泥染めの世界
コッカファブリック(以下KF):泥染めとはどういうものなのでしょうか?
朝武雅裕さん(以下M):草木染の染色技法の一つです。予め植物性のタンニンを地染めした生地に泥を付着させると、タンニンが泥の中の鉄分と反応して黒く発色します。日本では奄美大島で作られている泥大島が有名です。トモタケでは保湿力の高い泥に鉄を混ぜて、ペースト状の泥を指で生地に塗り込んで柄を描き、乾燥した後熱を加え洗い流します。これは古来の泥染の技法を応用した染め方になります。
KF:指で泥を練り込んで柄を描くなんて独創的ですね。雅裕さんは学生時代、田んぼでのアート展で、大きな布に泥でペインティングするインスタレーションを行なっています。このときに泥染めの魅力を知ったそうですが、どんなところに魅力を感じたのですか?
M:小さい頃の泥んこ遊びの延長で、大きな布に泥を擦り付けたり、投げつけたりして、その後泥を洗い流したら、その痕跡がそのままの形で染まりついていました。絵筆で描くのとも違い、絵の具を紙に塗っていくのとも違う、その感触やアバウトさが心地よかったのだと思います。
KF: なるほど。泥んこ遊びの延長に思わぬ宝が潜んでいた・・・。その後、お仕事で酒屋さんの暖簾を泥染めで制作された際に、その染めた布で鞄やコースターを作ってみたそうですね。
M:制作する過程で普通の家の設備で量産ができるように色々と工夫を重ねました。色こそ単色ですが、濃淡を染め分けたり、型染を応用し始めたり、泥を刷り込んでいく際の微妙なムラなど、他の染色技法ではない表情が得られる事に気づきました。
朝武広子さん(以下H):私は暖簾の制作の頃から少しずつ制作の手伝いを始めたのですが、泥染の布と古い帯や着物の生地を接ぎ合わせているのを見て、泥染は鮮やかな色とも相性が良いなと思いました。
夫は暖簾のほかにもアート作品を作っていて、寝室に泥染めとカラーの生地をパッチワークした大きな作品があったのですが、長女の出産や授乳で寝室にいる時間が多かった時期に泥染の濃淡をぼーっと見ていると心が落ち着くことに気がついて。
ただ、当時住んでいたアパートには大きすぎるサイズだったので、何かもっと手に取りやすくて生活に取り入れやすいものに置き換えてみたら…と寝転びながら考えていました。それでコースターや鞄を作り始めたのですが、小さいサイズであれば家でも制作ができるし、コースターは技術的な染めの実験がしやすいので、毎年数枚ずつですが新しい柄が出来て、今では40種類ほどになりました。
『Visit artist file 021 トモタケさん(泥染め作家)』の続きを読む